人間に都合がいいように環境を作り変えるのではなく環境に合わせて自ら変容してゆく、という本書で描かれる人類の姿は、ブルース・スターリングの《工作者シリーズ》にも較べられます ― 。その〈汎趨勢工学(パントロピー)〉という概念を打ち出したのは本書が最初です。 ブリッシュの良いところは、数十年先を見越した独創的な自然科学的アイディアに、心理学的・社会学的に的確な分析、付け焼刃じゃない文学的教養、などをうまくマッチングさせるところです。「ビープ」、「コモン・タイム」、「暗夜航路」、「芸術作品」、「恒星への抜け道」、“Get Out Of My Sky”、など短編に傑作が多かったと思いますね。 本書はその得意の中短編四つから成るオムニバス長編です。なかでもいちばん有名な「表面張力」は、かつてSFマガジンと世界SF全集に収録されたことがありますが、完全版は本書にしか入っていません。この形でしか感動を呼ばないはずです。第二部「屋根裏の物」もオールディスの『地球の長い午後』に与えた影響が感じられる重要な一篇です。なにげに復刊の価値ありですよ。改訳のうえ是非。(2003/09/11)
復刊リクエスト投票
盲いたるオリオン
【著者】クロード・シモン
“叢書創造の小径” は、新潮社の持つ財産のひとつです。
コンパクトな版型に組み直すなどして出せるはずです。需要は大アリです。(2003/09/27)
世界終末戦争
【著者】マリオ・バルガス=リョサ
リョサの主要な小説のうちでこれだけ未読。けっこう気になっている。(2003/09/27)
モラヴィア傑作選・全10巻
【著者】アルベルト・モラヴィア
それにしても、この選集は意欲的な企画でした。だからこそ、復刊にも値すると思います。モラヴィアを読まずしてイタリア文学は語れません。(2003/09/19)
サセックスのフランケンシュタイン
【著者】H・C・アルトマン
1972年当時のカバー画は、強烈かつオシャレ。今でも使えます。(2003/09/13)
宇宙播種計画
【著者】ジェイムズ・ブリッシュ
本書はその得意の中短編四つから成るオムニバス長編です。なかでもいちばん有名な「表面張力」は、かつてSFマガジンと世界SF全集に収録されたことがありますが、完全版は本書にしか入っていません。この形でしか感動を呼ばないはずです。第二部「屋根裏の物」もオールディスの『地球の長い午後』に与えた影響が感じられる重要な一篇です。なにげに復刊の価値ありですよ。改訳のうえ是非。(2003/09/11)
ヒューマノイド
【著者】ジャック・ウィリアムスン
この作品との最初のなれそめは、子供向けの『なぞの宇宙ロボット』でした。赤い照り返しに鈍く輝く漆黒のヒューマノイド…人類の「福祉」を約束するため、星々の向こうから突如大挙し、われわれを拘束し、自由を剥奪する …そんなSFっぽさがたまらなかった。『ヒューマノイド』 はその完訳版で、姉妹篇「組み合わされた手」(これも翻訳がある)とともに入手しづらい状態です。
1908年生れで「生ける伝説」ともいうべき現役作家ウィリアムスン。ヒューゴー/ネビュラ両賞受賞作を組み込んだ『テラフォーミング・アース』の原書も、つい購入してしまいました。
ちなみに、『ヒューマノイド』にはいくつか続編もあり(未訳ですが、『ヒューマノイド・タッチ』など)、それらとまとめて出して欲しいものです。
※2006年11月10日、ウィリアムスン氏が永眠されました。享年98歳。(2003/09/09)
偉大なる幻影
【著者】D・ブッツァーティ
代表作『タタール人の砂漠』も最近書店であまり見かけなくなってるなあ。(2003/09/08)
クラカチット
【著者】カレル・チャペック(作)、田才益夫(訳)
『山椒魚戦争』や『RUR(ロボット)』のようなチャペック作
品が好きな人ならきっと気に入るはずです。(2003/09/04)
ある生涯の七つの場所 全8巻 (文庫では全7巻)
【著者】辻邦生
新しいSF
【著者】ラングドン・ジョーンズ
D・M・トマスの詩「適合する臓器提供者を求めて」には泣きました。いま読み返しても泣けます。
読みにくい翻訳だと言う人もいましたが、自分は気に入ってます。必ずしも翻訳のせいとばかりは言えない。もともと原文が解り易く書かれていませんから。(2003/08/30)
わが夢の女
【著者】マッシモ・ボンテンペルリ
因みに、「信じやすい少女の心」がフィリップ・K・ディックのある短編にそっくりで、ビックリすること請け合いです。書かれたのは、もちろんボンテンペルリのほうが先です。(2003/08/29)
地球最後の砦
【著者】A・E・ヴァン・ヴォークト
『宇宙嵐のかなた』は何年か前にいちど復刊されましたけ
ど、どうせならこの『地球最後の砦』を出さなきゃ。
もし復刊されたら、どこかの駅前で、ティッシュ配りみたい
に大量にこの本を配ってみたい。…ヴォークトの謎めいた
登場人物のように。(2003/08/26)
貧乏学入門(貧しさをどう楽しむか)
【著者】ジョージ・マイクス(ジョージ・ミケッシュ)
“貧乏を楽しむ”ことができるかどうかは疑問ですが、貧乏ゆえの「潔癖さ」など持たなくたって別にいいのではないか。金持ち同様、欲深で、ズルくて、余裕をかましていていいのだ。そして貧乏生活ではなくて人生を楽しむのだ。そうでないと自分がつぶれる。
そのへん、ミケシュのウィットに富んだ警句を期待しているのですが。つまり、人生へのヒントを。(2003/08/23)
金持学入門(豊かさにどう耐えるか)
【著者】ジョージ・マイクス(ジョルジュ・ミケッシュ)
食う心配がなくなったとして、問題はどうするかです。おそらくは、お金の使い途や生活設計、人生や人間一般や人類の“目的”についてのあらかじめ考え抜いた哲学の差がそこに出るんでしょうね。
個人レベルというよりも、企業、自治体、政治(広く言って文化)のレベルで如実に現れるような気がします。かつての金持国イギリスのミケシュ(出身はハンガリー)がそのへん皮肉たっぷりに語ってくれていそうで、是非読みたいと思います。(2003/08/23)
テスケレ
【著者】ルーチョ・チェーヴァ
あと、復刊には改訳が必要な気がします。(2003/08/13)
目的地アルファ・ケンタウリ
【著者】A・E・ヴァン・ヴォークト
目まぐるしい快作。“世代宇宙船”、恒星間飛行、異星種族とのコンタクト、
…ありとあらゆる要素が詰めこまれた作品で、どことなくオラフ・ステー
プルドンを思い出させます。乗組員がみんなクリンゴン人のような性格な
ので愉しかったものです。
― 「おい! 宇宙の本質をつきとめたぞ」
レズビー五世がどうやってつきとめたか知りたければ、是非御投票を。(2003/08/13)
迷宮都市
【著者】デヴィッド・ブルックス
トリを飾る作品 「SEIの本」 、これはオクタビオ・パスの散文詩(詩的短編小説)に似ているかも知れない。詩的意匠において匹敵する仕上がりになっています。 ― 変転・転身・流転についての、新しい知識を与えてくれますよ、これはイイ。現代文学に付け加わる新しい「何か」でした。恐るべし、オーストラリア文学!(2003/08/09)
太古の呼び声 (原題 『アダム以前』)
【著者】ジャック・ロンドン
翻訳は本当に読み易い。読み出したら、あっという間に読んでしまいましたね。ヒロイック・ファンタジーの元祖的要素もあるし、ユング的なものもちらついています。これ読むと、ジャック・ロンドンは天才って感じです。(2003/08/08)
後継者たち
【著者】ウィリアム・ゴールディング
尚本書は、別の長篇『自由な転落』と共に中央公論社の世界文学全集に収められたこともあります。(2003/08/08)
帰郷ノート 植民地主義論
【著者】エメ・セゼール
あの詩で謳われた、カリブともアフリカとも判別がつかないシュル・レアリスティックな情景、ハイタカの化身となったかのような激情、ほとんどオブジェとなって石のように投げつけられる暗喩と直喩…壮大で、しかも直かに心臓をつかむ、今までに読んだことがないような文学の可能性を、今もって忘れることは出来ません。
隆盛を極めるカリブ海文学にまずセゼールがあった、ということをもっと広く知らしめても良いのではないかと思います。
因みに映画『マルチニックの少年』のモデルはセゼールじゃないかなあと長年考えているのですが、どうでしょう。(2003/08/08)