occam's razorさんのページ 復刊リクエスト投票 奇妙な悪魔 【著者】ジェーン・ギャスケル 著名な物語作家14歳のときの作品と聞けば、やはり読んでみたくなる。幸いにもある古本屋で見つけて読んでみました。 前半はいわば都会ファンタジーでしょうか。この年齢の作者の背のびの仕方がややほほえましい。でもこの調子で恋の駈引きを描き切ったら、“幻想味を加えたフランソワーズ・サガン”として話題になったでしょう。サガンの理屈っぽさと無益なアンニュイがなく、むしろ秘められた欲望を描き切った心理小説として好評価を得ていたはずです。 かたや突如として舞台を転じた後半部は、絢爛豪華さは楽しんだもののちょっと失望。まあ、しかたないですね。いえ、ヤングアダルトの冒険小説として再刊の価値はあると思いますね。『アトランの女王』の作者の作品という付加価値もあるのですから。(2009/11/07) 旅路-ピランデルロ短篇集 【著者】ルイジ・ピランデルロ著 内山寛訳 かなり昔の話です。もう本屋の棚から本書が消えていたころ、偶然に入った都下のある駅の本屋で、本書を見つけました。ホコリをかぶって端もすこしボロになっていたもののその場ですぐ買ったのは幸いでした。その夜ひもといていった一篇一篇の印象が忘れられません。 恐ろしいことです。以来長年にわたり、訪れた都内の有名古本屋(や穴場的な古本屋)は数知れませんが、一度として本書を見かけたことはないのです。 ピランデルロの本領である戯曲と同じで、強い印象を残す流れるような筆致と奇妙な戸惑いを残す「あの感じ」は短編でも生きています。かつて『カオス ―シチリア物語』という見事なオムニバス映画にもなった彼の短編は、これから日本で再評価していくべきものです。(2007/06/14) 時間と空間の冒険 全2巻 【著者】R・J・ヒーリィ&J・F・マッコーマス(編) 「夜来たる」「鎮魂曲」「黒い破壊者」など周知の名作にまじって、知られざる逸品、忘れられかけている好篇も読めます。1946年という刊行年代からも分かるように、初の本格的SFアンソロジーです。現在の目からすると古色蒼然たるイメージがありますが、逆に言えば現在では掘り起こせない作品群。当時印象を与えた作品というものは現在でもそれなりの香気を保っていたりするのですね。D・A・スチュアート(ジョン・W・キャンベル)の「忘却」、M・ヒューギ(E・F・ラッセル)の「機械ねずみ」、P・スカイラー・ミラーの「時の砂」と「存在の環」、カートミルの「連環」(ゴールディングの『後継者たち』のリクエストをご覧下さい)、バウチャーの「Q.U.R.」、などがそれにあたります。「黒い破壊者」は有名な『宇宙船ビーグル号』の1挿話ですが、雑誌掲載版が収録されているので、主人公は単行本で書き加えられたグローヴナーではなく日系のカリタ氏です。そういった点も注目です。未刊に終わった第3巻のF・ライトの「脳」とか、R・D・ミラーの「ピラミッドの中で」などはどんな話なのかな。復刊の折には、是非全訳版でお願いしたいと思います。(2006/09/16) デュブーシェ詩集 【著者】アンドレ・デュブーシェ 「内容紹介」にもあるとおり、デュブーシェは現代フランスを代表する詩人です。先頃亡くなりましたが、その作品が死と共に消滅したという感じはまったくしません。デュブーシェが表現した雄弁な(饒舌なではない)沈黙はサミュエル・ベケットに通じますが、自らすすんで生と死の狭間に異様さを見る勇敢さはベケット以上と感じられました。シュルレアリスムと言われたことがあったような気もしますが、一時期のフランス思潮、実存主義の流れを汲む詩というか、そのイメージ化に最も成功した例、という気がするのです。(実存主義の「思想」はないにしても) それと、わたしの印象ではパウル・クレーの『死と炎』や『美しい女庭師』といった絵のイメージにも近い。他の方の印象はまた違うでしょうけど…。大判でマイナー感のある造本だったし、広くは読まれないでしょうが、絶版とはもったいないなあ。(2006/02/23) オクタビオ・パス詩集 世界現代詩文庫 【著者】オクタビオ・パス パスは結構古くから文学論や文化論の著作が紹介され、その偉大さが広く知られてきましたが、散文家である前にこの人はパブロ・ネルーダと並ぶ偉大な詩人です。世界現代詩文庫の『オクタビオ・パス詩集』および『続オクタビオ・パス詩集』の出版で日本におけるこの文人の偏った印象がただされたし、何より充分堪能させてもらいました。世界文学の視野に立っても良いしラテンアメリカ文学の視野に立っても良いのですが、この選詩集がないだけでかなりの欠如を実感しますね。パスを読まなければ詩を語る資格なし、とまで考えていたので、常時読めるよう復刊をお願いします。(2006/02/23) もっと見る
復刊リクエスト投票
奇妙な悪魔
【著者】ジェーン・ギャスケル
前半はいわば都会ファンタジーでしょうか。この年齢の作者の背のびの仕方がややほほえましい。でもこの調子で恋の駈引きを描き切ったら、“幻想味を加えたフランソワーズ・サガン”として話題になったでしょう。サガンの理屈っぽさと無益なアンニュイがなく、むしろ秘められた欲望を描き切った心理小説として好評価を得ていたはずです。
かたや突如として舞台を転じた後半部は、絢爛豪華さは楽しんだもののちょっと失望。まあ、しかたないですね。いえ、ヤングアダルトの冒険小説として再刊の価値はあると思いますね。『アトランの女王』の作者の作品という付加価値もあるのですから。(2009/11/07)
旅路-ピランデルロ短篇集
【著者】ルイジ・ピランデルロ著 内山寛訳
恐ろしいことです。以来長年にわたり、訪れた都内の有名古本屋(や穴場的な古本屋)は数知れませんが、一度として本書を見かけたことはないのです。
ピランデルロの本領である戯曲と同じで、強い印象を残す流れるような筆致と奇妙な戸惑いを残す「あの感じ」は短編でも生きています。かつて『カオス ―シチリア物語』という見事なオムニバス映画にもなった彼の短編は、これから日本で再評価していくべきものです。(2007/06/14)
時間と空間の冒険 全2巻
【著者】R・J・ヒーリィ&J・F・マッコーマス(編)
デュブーシェ詩集
【著者】アンドレ・デュブーシェ
大判でマイナー感のある造本だったし、広くは読まれないでしょうが、絶版とはもったいないなあ。(2006/02/23)
オクタビオ・パス詩集 世界現代詩文庫
【著者】オクタビオ・パス
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