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ウルリヒさんの公開ページ 復刊投票コメント一覧

復刊リクエスト投票

  • 死の床に横たわりて

    【著者】ウィリアム・フォークナー 著 / 佐伯彰一 訳

    ウィリアム・フォークナーには『響きと怒り』と『アブサロム、アブサロム!』という代表作があるが、長さはその半分に満たないながらも、『死の床に横たわりて』は質的にもその2作に次ぐ秀作である。各人の内的独白のみによる構成という発表当時では斬新で前衛的な手法と近代的自我以前の土着性という題材とがダイナミックに激突し、めざましい成果を上げている。これは多くの人に読んでもらいたい。(2023/12/24)
  • 死せる魂

    【著者】ゴーゴリ

    ニコライ・ゴーゴリはウクライナ文学最高の作家であり、『死せる魂』はその最高傑作だ。名訳で知られる岩波文庫版は、2008年、2016年と増刷されているから、次は2024年と予想される。欲しい人はその時忘れずに購入すべし。(2023/07/02)
  • 鳩の翼(上下)

    【著者】ヘンリ・ジェームズ

    ヘンリー・ジェイムズの小説は比較的短い『デイジー・ミラー』と『ねじの回転』がよく文庫化されるが、あまり大した作品ではない。重厚長大な心理小説『ある婦人の肖像』『鳩の翼』『使者たち』『黄金の盃』こそがこの作家の真髄である。とりわけ『鳩の翼』はヒロインのケイトが非常に魅力的に造型されていて、読後も長く心に残る。映画版は凡庸な出来だったが、小説は傑作だ。(2023/07/01)
  • ルーゴン家の誕生

    【著者】エミール・ゾラ

    ナポレオン3世が統治した第二帝政の約20年間のフランスをエミール・ゾラが描ききろうとした『ルーゴン=マッカール叢書』全20巻の第1巻が『ルーゴン家の誕生』であり、ゾラの故郷エクサンプロヴァンス(小説ではプラッサン)を舞台にしている。19世紀のフランスは王政、帝政、共和政がめまぐるしく交代した時代で、各陣営間の政争も激しかった。そのなかで、人々がどう生きてきたかをゾラは克明に描いている。この小説のラストのシルヴェールの死の描写は見事で、一流の作家であることを早くも証明していたといえる。この本の巻末には「ルーゴン=マッカール家系樹」が付いていて、全20巻の主人公たちを見渡すことができる。(2023/02/05)
  • 夏幾度も巡り来て後に

    【著者】オールダス・ハックスレー

    わたしはハックスレ―が好きなので、彼の小説が広く読まれることを望んでいる。この本をわたしは新刊時に購入して所有しているが、翻訳タイトルがまだるっこしい。『幾たびか夏過ぎて』がいいのではないだろうか。(2022/12/31)
  • 生きる歓び

    【著者】エミール・ゾラ

    徳田秋声の女を主人公にした自然主義小説『あらくれ』や『縮図』にもっとも近いフランスの自然主義文学がゾラの『生きる歓び』だと思う。人間の性格と生活を真摯に描いた名作。(2022/08/20)
  • 影の獄にて

    【著者】L・ヴァン・デル・ポスト 著 / 由良君美 富山太佳夫 訳

    わたしは「戦場のメリークリスマス」が公開される1年以上前に、原作の『影の獄にて』の邦訳初版本を購入して読んだ。今から40年以上前の学生時代のことである。内省的で美しい心理小説の傑作だった。そのあと大島渚監督の映画を見たが、これも東洋と西洋の激突と和解を描いたすぐれた作品だった。原作本は映画公開後かなり売れたはずだが、今では古本屋にもあまり出回っていないらしい。わたしのように大事に本棚に保管している人が多いのではないか。それだけ愛着が湧く本だからである。(2022/01/23)
  • 失われた横顔

    【著者】フランソアーズ・サガン

    サガンの新潮文庫といえば、ショッキングピンクの背表紙とビュッフェのカバー画が定番だった。わたしの手許には『一年ののち』『すばらしい雲』『失われた横顔』のジョゼ三部作がある。いずれも古本屋で見つけて買い集めたものである。個人的には入手困難な本を古本屋で探すのは好きだが、どうしても新本が欲しいという人もいるようなので、復刊希望に一票を投じることにする。(2022/01/12)
  • 夜よゆるやかに歩め

    【著者】大江健三郎

    現在、講談社から刊行されている『大江健三郎全小説』にも収録されなかった幻の恋愛小説。新潮文庫のナボコフ『ロリータ』の解説で、大江は自分がロマンチックな小説を書かなかったというが、実際は『夜よゆるやかに歩め』を書いている。本の形態は二種類、中央公論社のハードカバーと講談社ロマン・ブックス(新書サイズ)である。どちらも古本は高騰化している。大江の小説を愛読する人はできれば読んだ方がいい。他の小説にはないロマンチックな雰囲気を楽しめるだろう。(2021/09/11)
  • 我らが共通の友 全三巻

    【著者】チャールズ ディケンズ

    『我らが共通の友』はディケンズの長編では完結した最後の作品である。例によって分厚い文庫本3巻にもなる長大な小説であるが、間二郎の翻訳はちくま文庫のために訳し下ろされた新しいもので、読みやすい。ディケンズ作品のなかでは何故か知名度は高くないが、読んでみるとその面白さは有数である。皮肉とユーモアを駆使しつつ、人間に対する深い洞察と慈愛に満ちた物語の展開に唸ってしまう。あえて言うなら、ディケンズの最高傑作だと思う。わたしは出版直後に購入したから困っていないが、最近この小説を知った人にとって入手困難なのは残念である。日本でもっと読まれてディケンズファンが増えることを希望する。(2020/07/10)
  • カフカ全集 全12巻

    【著者】カフカ

    リアリズムでもファンタジーでもマジック・リアリズムでもない、現実のなかに夢を導入したカフカの特異な作風は、ひとたび読んだら忘れられない強烈な印象をもたらす。新潮社が1980年に刊行した決定版カフカ全集全12巻は、長短編の小説に加え、ノートや日記、さらに膨大な手紙を余すところなく収録している。各巻を収める函のデザイン(カフカの肖像とプラハの街並みの多重露光)や本体のライトグレーのクロス装が素敵だし、川村二郎、圓子修平、前田敬作、中野孝次、吉田仙太郎、城山良彦など翻訳陣も申し分がない。カフカは好きになると一生の友になるので、全集を手に入れた人が手放さず、古書店で目にすることは滅多にない。ブロート版の底本で問題はないので、復刊により多くの日本人に読まれてほしいと思う。(2020/04/07)
  • モンテ=クリスト伯

    【著者】アレクサンドル・デュマ

    この長大な傑作大衆小説は、コンパクトな文庫本でどこにでも持ち歩いて読み進めるのが望ましい。最近、大矢タカヤスの新訳が1巻本で出版されたが、あまりに分厚くて書斎で読むほかはない。それではこの本の魅力が損なわれるおそれがある。集英社文庫での復刊を希望する理由である。(2018/02/15)
  • 収容所群島

    【著者】ソルジェニーツィン

    政府を批判しただけでたちまち逮捕し、収容所送りにするという自由を圧殺したソビエト共産主義体制(社会主義と表記する人がいるが、共産主義とは似て非なるものである)が崩壊してすでに四半世紀が過ぎた。単なる体制告発の書にとどまるのであれば、この時の流れのなかで本書はすでに忘れ去られていたはずである。しかし、いまだ復刊要望の声が衰えようとはしていない。文学作品が時代の荒波に揉まれつつも古典としてその命脈を保ち続けているのは、いつの時代においても変わることのない人間の真実を捉えているという証左である。自らに振りかかった苦難をユーモアで笑い飛ばすこの作家の強靭な精神のありようをこそ見るべきであろう。『収容所群島』はアレクサンドル・ソルジェニーツィンがロシアの再生を、そして人間の再生を願ってやまなかった希望の書である。日本語版の再生を願わずにはいられない。(2016/03/15)
  • 重力の虹

    【著者】ピンチョン

    現在新潮社から別訳が出版されており、取りあえず日本の読者がピンチョンのこの代表作を読むことができないという不幸な事態は回避されている。しかし、新潮社版の訳者はかなりくせが強く、その日本語が合わないという読者も少なくない。その点、国書刊行会版の邦訳はオーソドックスで読みやすい。わたしはいつも手許に置いて、好きな時に読みたい箇所を読み返している。世界に冠たるアメリカを強烈に風刺してやまない反米アナーキスト作家によるめくるめく知の冒険に驚倒するばかりである。(2015/10/15)
  • ドストエフスキイ前期短篇集、後期短篇集

    【著者】ドストエフスキー

    最近、講談社文芸文庫から「鰐」や「やさしい女」が刊行されたが、それでもこの2冊の短篇集の貴重さは失われていない。特に、後期短篇集は貴重であり、『作家の日記』のあちこちに隠れ潜んでいる短篇をかき集めたもので、1冊でまとめて読めるのはこの本だけである。なかでも「宣告」という作品が気に入っている。長篇とは異なる味をこれらの短篇で大いに愉しむことができる。(2010/08/27)
  • ドストエフスキー全集

    【著者】ドストエフスキー

    ドラマティックな『未成年』、ウェルメイドな『虐げられた人びと』、鋭敏な感覚の『ネートチカ・ネズワーノワ』がわがベスト3である。世評高き『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』は他の人に任せるとしよう。わたしは自分の愛する作品を文庫と全集、異なる訳でその魅力を味わうことに無上の喜びを感じるのだ。(2010/08/19)
  • 平役人

    【著者】オノレ・ド・バルザック

    バルザックの人間喜劇の多くは現在文庫や全集やハードカバーで読めるようになったが、いくつか読めない重要作がある。『平役人』もそのひとつである。わたしが最も敬愛してやまないこの作家の小説を全作日本語で読める日がいつか来るだろうか。(2010/08/05)
  • 夜のみだらな鳥

    【著者】ホセ・ドノソ

    一世を風靡したラテンアメリカ文学の諸作のなかで、とりわけ幻想と狂気の色濃い世界が展開され、ちょっと似たものを思い出せない異色作だ。ブニュエルが「度肝を抜かれた傑作」と表現し、フエンテスは「われわれの時代の偉大な小説のひとつ」と称揚した。集英社はかつて『三つのブルジョワ物語』は文庫化したが、このドノソの代表作は文庫にしていない。もったいないことである。(2010/08/01)
  • 世紀児の告白

    【著者】アルフレッド・ド・ミュッセ

    この岩波文庫2巻本は1953年初版で、1994年に久しぶりに限定復刊された。ミュッセといえば、新潮文庫の『二人の愛人』が長い間読まれていて、本作は忘れ去られていた。重苦しい恋愛小説だが、ラストは爽やかである。映画『ポンヌフの恋人』の監督レオス・カラックスがインタビューでこの小説の幕切れと自分の映画をリンクさせて語っていたのが印象に残っている。(2010/05/29)
  • 帰郷

    【著者】トマス・ハーディ

    美貌で誇り高く、邪心なく潔いユーステイシアというヒロインが圧倒的に魅力的である。荒野からパリへ脱け出そうとする彼女と、パリから荒野に帰郷する青年。二人が交差し、運命は思わぬ方向に展開していく。読後のカタルシスはハーディ作品中随一だと思う。(2010/05/29)

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