ウルリヒさんの公開ページ 復刊投票コメント一覧 公開ページTOPへ 復刊リクエスト投票 我らが共通の友 全三巻 【著者】チャールズ ディケンズ 『我らが共通の友』はディケンズの長編では完結した最後の作品である。例によって分厚い文庫本3巻にもなる長大な小説であるが、間二郎の翻訳はちくま文庫のために訳し下ろされた新しいもので、読みやすい。ディケンズ作品のなかでは知名度は高くないが、読んでみるとその面白さは有数である。わたしは出版直後に購入したから困っていないが、最近この小説を知った人にとって入手困難なのは残念である。日本でもっと読まれてディケンズファンが増えることを希望する。(2020/07/10) カフカ全集 全12巻 【著者】カフカ リアリズムでもファンタジーでもマジック・リアリズムでもない、現実のなかに夢を導入したカフカの特異な作風は、ひとたび読んだら忘れられない強烈な印象をもたらす。新潮社が1980年に刊行した決定版カフカ全集全12巻は、長短編の小説に加え、ノートや日記、さらに膨大な手紙を余すところなく収録している。各巻を収める函のデザイン(カフカの肖像とプラハの街並みの多重露光)や本体のライトグレーのクロス装が素敵だし、川村二郎、圓子修平、前田敬作、中野孝次、吉田仙太郎、城山良彦など翻訳陣も申し分がない。カフカは好きになると一生の友になるので、全集を手に入れた人が手放さず、古書店で目にすることは滅多にない。ブロート版の底本で問題はないので、復刊により多くの日本人に読まれてほしいと思う。(2020/04/07) モンテ=クリスト伯 【著者】アレクサンドル・デュマ この長大な傑作大衆小説は、コンパクトな文庫本でどこにでも持ち歩いて読み進めるのが望ましい。最近、大矢タカヤスの新訳が1巻本で出版されたが、あまりに分厚くて書斎で読むほかはない。それではこの本の魅力が損なわれるおそれがある。集英社文庫での復刊を希望する理由である。(2018/02/15) 収容所群島 【著者】ソルジェニーツィン ソビエト共産主義体制が崩壊してすでに四半世紀が過ぎた。単なる体制告発の書にとどまるのであれば、この時の流れのなかで本書はすでに忘れ去られていたはずである。しかし、いまだ復刊要望の声が衰えようとはしていない。文学作品が時代の荒波に揉まれつつも古典としてその命脈を保ち続けているのは、いつの時代においても変わることのない人間の真実を捉えているという証左である。自らに振りかかった苦難をユーモアで笑い飛ばすこの作家の強靭な精神のありようをこそ見るべきであろう。『収容所群島』はアレクサンドル・ソルジェニーツィンがロシアの再生を、そして人間の再生を願ってやまなかった希望の書である。日本語版の再生を願わずにはいられない。(2016/03/15) 重力の虹 【著者】ピンチョン 現在新潮社から別訳が出版されており、取りあえず日本の読者がピンチョンのこの代表作を読むことができないという不幸な事態は回避されている。しかし、新潮社版の訳者はかなりくせが強く、その日本語が合わないという読者も少なくない。その点、国書刊行会版の邦訳はオーソドックスで読みやすい。わたしはいつも手許に置いて、好きな時に読みたい箇所を読み返している。世界に冠たるアメリカを強烈に風刺してやまない反米アナーキスト作家によるめくるめく知の冒険に驚倒するばかりである。(2015/10/15) ドストエフスキイ前期短篇集、後期短篇集 【著者】ドストエフスキー 最近、講談社文芸文庫から「鰐」や「やさしい女」が刊行されたが、それでもこの2冊の短篇集の貴重さは失われていない。特に、後期短篇集は貴重であり、『作家の日記』のあちこちに隠れ潜んでいる短篇をかき集めたもので、1冊でまとめて読めるのはこの本だけである。なかでも「宣告」という作品が気に入っている。長篇とは異なる味をこれらの短篇で大いに愉しむことができる。(2010/08/27) ドストエフスキー全集 【著者】ドストエフスキー ドラマティックな『未成年』、ウェルメイドな『虐げられた人びと』、鋭敏な感覚の『ネートチカ・ネズワーノワ』がわがベスト3である。世評高き『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』は他の人に任せるとしよう。わたしは自分の愛する作品を文庫と全集、異なる訳でその魅力を味わうことに無上の喜びを感じるのだ。(2010/08/19) 平役人 【著者】オノレ・ド・バルザック バルザックの人間喜劇の多くは現在文庫や全集やハードカバーで読めるようになったが、いくつか読めない重要作がある。『平役人』もそのひとつで、長年探しているが、どうしても見つからない。わたしが最も敬愛してやまないこの作家の小説を全作日本語で読める日がいつか来るだろうか。(2010/08/05) 夜のみだらな鳥 【著者】ホセ・ドノソ 一世を風靡したラテンアメリカ文学の諸作のなかで、とりわけ幻想と狂気の色濃い世界が展開され、ちょっと似たものを思い出せない異色作だ。ブニュエルが「度肝を抜かれた傑作」と表現し、フエンテスは「われわれの時代の偉大な小説のひとつ」と称揚した。集英社はかつて『三つのブルジョワ物語』は文庫化したが、このドノソの代表作は文庫にしていない。もったいないことである。(2010/08/01) 世紀児の告白 【著者】アルフレッド・ド・ミュッセ この岩波文庫2巻本は1953年初版で、1994年に久しぶりに限定復刊された。ミュッセといえば、新潮文庫の『二人の愛人』が長い間読まれていて、本作は忘れ去られていた。重苦しい恋愛小説だが、ラストは爽やかである。映画『ポンヌフの恋人』の監督レオス・カラックスがインタビューでこの小説の幕切れと自分の映画をリンクさせて語っていたのが印象に残っている。(2010/05/29) 帰郷 【著者】トマス・ハーディ 美貌で誇り高く、邪心なく潔いユーステイシアというヒロインが圧倒的に魅力的である。荒野からパリへ脱け出そうとする彼女と、パリから荒野に帰郷する青年。二人が交差し、運命は思わぬ方向に展開していく。読後のカタルシスはハーディ作品中随一だと思う。(2010/05/29) 魔術師 【著者】ジョン・ファウルズ よくある男女の出会いと別れがあり、そのあとエーゲ海の孤島に舞台が移り、訳のわからぬ出来事が頻発し、そしてラストは…。ファウルズの知的仕掛けが横溢した小説であり、この世界で生きる上でいったい何をよすがにすればいいか、さんざん迷わせた挙句、辿りつくのはとてもシンプルな答えだった。小笠原豊樹の訳で読めるのは素晴らしい。(2010/05/29) マーティン・チャズルウィット(上・中・下巻) 【著者】チャールズ・ディケンズ この作品と『我らが共通の友』がちくま文庫から刊行された時はとても驚いた。さして売れるとはとても思えなかったからである。どちらも即座に購入したが、その後ほどなくしてやはり絶版になった。絶版後に読みたくなった人は新本を買う機会がなかったわけで気の毒である。こういった本が新刊で売られている光景はとても素敵だと思う。(2010/05/26) アルテミオ・クルスの死 【著者】カルロス・フェンテス この文体の感覚、イメージ、実験的手法、哲学、いずれもわたしの好みと合致する。たたき上げであくどいこともやってのし上がったアルテミオ・クルスという人物。その孤独と悲哀を読みとれるかどうかがこの小説の勘所だ。この本はさっぱり売れなかったようで、とんと古書店ではお目にかからない。絶版もやむを得ないのだろうが、このまま埋もれてしまうのも忍びない気がする。(2010/05/25) その前夜 【著者】ツルゲーネフ ツルゲーネフの長編は、概して経済的に余裕があって暇をもてあます人々の心の移ろいを描いていて、とりとめがない印象のものが多いが、『その前夜』はあまり有名でないのが不思議なくらい生彩があった。情熱を内に秘め、その情熱を解放してくれる男と巡りあい、自分の運命を切り開く女が魅力的だった。(2010/05/15) ロシア美人 【著者】ウラジーミル・ナボコフ この本は店頭で見かけてすぐ購入した。クノップのカバー画がじつに美しかったからである。やはりナボコフの本はこうでなくてはいけない。重版はかかったようだが、文庫化はされずに絶版。『ロリータ』の隣にこの本も置かれていればいいのにと思う。ナボコフらしい一筋縄ではいかない巧緻な短編が収められている。(2010/05/14) ヒロシマ、私の恋人,かくも長き不在 新装版―シナリオとディアログ 【著者】マルグリット・デュラス 映画『ヒロシマ、私の恋人』はわたしにとって史上ベストワンの作品である。DVDを所有し、時々見直している。アラン・レネとマルグリット・デュラス、及びエマニュエル・リヴァと岡田英次による共同作業で出来上がったフィルム。この本はそのシナリオと覚書、スチール写真で構成されている。ヒロシマの原爆投下による惨禍をフランス人がわが事として捉えることは可能なのか?自らのドイツ兵との悲惨な恋の体験ほどの切実さをこめて。他者とコミュニケーションをとることの困難さに打ちひしがれながら、なおも別れられぬ二人。主演女優のリヴァがこの映画の撮影時に自分のカメラでヒロシマを撮っていて、これが最近『HIROSHIMA 1958』という写真集として出版された。二冊あわせると、さらに興趣が深まるだろう。追記:このハードカバー本はちくま文庫に入った際、『ヒロシマ、私の恋人』(清岡卓行訳)と『かくも長き不在』(阪上脩訳)の二冊に分けられたが、その後どちらも絶版になった。そして、2014年に前者のみが河出書房新社から工藤庸子訳で『ヒロシマ・モナムール』と改題されて出版された。2021年の時点では新本を購入可能である。(2010/05/13) 遥か群衆を離れて 【著者】トマス・ハーディ ハーディの四大傑作は『帰郷』『キャスターブリッジの市長』『ダーバヴィル家のテス』『日陰者ジュード』といわれるが、本作はそれらに次ぐ秀作で、美しい田園風景のなかで展開する、1人の女と3人の男とのロマンティックな作品である。悲劇に終わることが多いハーディの大作のなかで、ハッピーエンドになっていることは貴重であり、人気がある理由であろう。わたしは幸いにも角川書店版と千城版を所有しているが、ハーディの代表作では最も入手しにくい翻訳になっている。ぜひ復刊して、多くの人に読んでもらいたい。1967年のジョン・シュレシンジャー監督の映画は原作にきわめて忠実に作られていて、ジュリー・クリスティーが魅力的であった。追記:2020年、この小説の新訳がようやく出版された。全集の一冊なので、かなり高額ではあるが、どうしても手許にほしい人は買うしかないだろう。読んだ人に気に入ってもらえるといいのだが。(2010/05/12) 四重奏/目 【著者】ウラジミール・ナボコフ この本は1968年に初版が刊行された。わたしは1992年の東京国際ブックフェア限定復刊の美しい新装版を購入した。クラシックな時計を描いたカバー画である。部数が少ないので、あれから20年近くたった今、この本を見かけることはほとんどない。四つの短編による「四重奏」と中編「目」が収録されている。ナボコフにしか書けない蠱惑的な作品集である。翻訳は名訳者小笠原豊樹。ロシア語も英語も流麗な日本語に訳せる貴重な人だが、ナボコフの小説の翻訳がこれ一冊のみだったことは惜しまれてならない。(2010/05/11) フィデルマンの絵 【著者】バーナード・マラマッド 最近刊行されたマラマッドの短編集『喋る馬』で、初めてその魅力に触れた読者もいることだろう。そんな人に勧めたいのが、聖なる滑稽譚『フィデルマンの絵』だ。西田実訳もいい。(2010/05/08) 前へ 1 2 3 4 次へ
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我らが共通の友 全三巻
【著者】チャールズ ディケンズ
カフカ全集 全12巻
【著者】カフカ
モンテ=クリスト伯
【著者】アレクサンドル・デュマ
収容所群島
【著者】ソルジェニーツィン
重力の虹
【著者】ピンチョン
ドストエフスキイ前期短篇集、後期短篇集
【著者】ドストエフスキー
ドストエフスキー全集
【著者】ドストエフスキー
平役人
【著者】オノレ・ド・バルザック
夜のみだらな鳥
【著者】ホセ・ドノソ
世紀児の告白
【著者】アルフレッド・ド・ミュッセ
帰郷
【著者】トマス・ハーディ
魔術師
【著者】ジョン・ファウルズ
マーティン・チャズルウィット(上・中・下巻)
【著者】チャールズ・ディケンズ
アルテミオ・クルスの死
【著者】カルロス・フェンテス
その前夜
【著者】ツルゲーネフ
ロシア美人
【著者】ウラジーミル・ナボコフ
ヒロシマ、私の恋人,かくも長き不在 新装版―シナリオとディアログ
【著者】マルグリット・デュラス
遥か群衆を離れて
【著者】トマス・ハーディ
四重奏/目
【著者】ウラジミール・ナボコフ
フィデルマンの絵
【著者】バーナード・マラマッド