大絶画さんのページ
レビュー
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『涅槃経』を読む(岩波現代文庫 学術322)
如来の常住
釈迦の臨終を描いた『大般涅槃経(以下、涅槃経)』は北本で40巻(南本36巻)にも渡る経典です。
その思想は『法華経』の一乗思想を発展させた如来蔵思想、すなわち生きとし生けるものは仏性(仏となる性質)を持つ「一切悉有仏性」にあります。
さてある人は「無我を説く仏教でなぜ我(仏性)を説くのか」と思われる人もいるでしょう。この点、インド伝統思想への回帰との批判が当初からあったようです。しかし『法華経』そして『涅槃経』を通して仏教の門戸が大きく開かれたことは無視できません。たとえば親鸞は『涅槃経』の一闡提成仏から教学を立ち上げました。
『涅槃経』は原始仏教から見れば多くの問題をはらみます。しかしその思想はグローバルな世界を生きる我々に多くの示唆を与えます。(2023/10/02) -
密教 インドから日本への伝承
密教の相承
密教において師から弟子への教えの伝達(相承)が重視されます。それは瓶から瓶へ水を一滴も漏らさず移すようなものと表現されます。
本書は「相承」という観点から密教史を見直した一冊です。
それは学術的に真偽を確かめるのではなく、また一つの宗派に注目してその正統性を問うのでもありません。密教に宿る宗教的精神を描くことにあります。
なぜ龍猛(龍樹)が鉄塔から両部の経典を発見したという“神話”が必要だったのか、その意義が見えてきます。(2023/09/12) -
道元禅師のことば『修証義』入門
修証義入門
明治時代、道元の主著である『正法眼蔵』を元に『修証義』が作られました。「修証義入門」と題した入門書・解説書は多々ありますが、一部を除きこの点を無視しているように思います。
本書では『正法眼蔵』をはじめ多くの経典から一節一節を読解し曹洞宗のみならず仏教理解に貢献する内容になってます。
また付録の現代語訳も必要以上に意訳されておらず、これから『修証義』を読もうという方におすすめです。(2023/08/30) -
仏説四十二章経・仏遺教経(岩波文庫 青307-1)
説教の始まりと終わり
『四十二章経』は初期に漢訳されたといわれる経典、『遺教経』はブッダの最期の教説とされるます。さらに『イ(氵に為)山警策』を加え、禅宗では「仏祖三経」と重用されています。
さてどちらも高尚な哲学的論議は少なく一般的な教訓が中心となっています。物足りなく感じる方もおられるかもしれませんが、仏教は実践の宗教と考えた時、これほど相応しい経典はないでしょう。生活の中に仏道を見いだす禅宗において重用されたのも当然です。
岩波文庫版は真文(漢文)と書き下し文のシンプルな構成で、修行のお供に相応しいと考えます。(2023/08/28) -
意識の形而上学
井筒哲学の到達点
井筒氏といえばイスラム哲学など言語分析で有名ですが、本作は遺作であり、井筒哲学の到達点と読んでも過言ではありません。
小書ではありますが、氏の比較思想・言語分析のエッセンス凝縮されており1度2度読んだ程度では理解できないでしょう。
しかし読み重ねるごとに意識・言語の背後に存在する深遠な世界が理解出るはずです。(2023/08/20)
復刊リクエスト投票
法華経物語(岩波現代文庫 学術315)
【著者】渡辺照宏
同文庫の『「維摩経」を読む』、『「涅槃経」を読む』ともに復刊してほしいです。(2023/10/02)
風の柔士 全2巻
【著者】真船一雄 漫画 / 富田常雄 原作
那須政隆著作集 全8巻
【著者】那須政隆
せめて4巻「五輪九字秘釈の研究」だけでも単行本化していただきたいです。(2023/10/01)
惑星をつぐ者 全一巻
【著者】戸田尚伸
できれば先生の読切りも収録した完全版で。(2023/09/30)
正法眼蔵参究 全5巻
【著者】安谷白雲
多数の解説書が出ていますが、日本を代表する宗教家であった安谷氏の著作も無視できないと思います。(2023/09/23)
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