大絶画さんのページ

レビュー
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ダキニ信仰とその俗信
ダキニ復権のために
雄山閣より刊行された新版『ダキニ天信仰と俗信』のレビューです。
ダキニ(ダーキニー、荼吉尼天)のオリジンは地母神ダーキンとされます。その後、暗黒神マハーカーラ(大黒天)の眷属となり、日本においては「狐が化かす」ことからダキニは悪神・邪神と結びつくようになりました。
マハーカーラが大国主命と結びつき福の神・大黒様となったことを考えると大きな違いです。
著者はダキニのルーツをたどりつつダキニの復権を望んでおられます。本書の復刊がダキニ信仰につながるよう語り継ぎましょう。(2025/12/06) -
イヴとイヴ(百合姫コミックス)
記念碑的作品
本件はGOTより刊行された新装版『イヴとイヴたち』のレビューです。
百合姫判に比べサイズが小さくなっていますが、2作の作品が追加で収録されトータルではお得になっているはずです。何よりも電子配信もなくなっていたので再び読めることが一番でしょう。
さて著者は主に成人向け作品で活躍されており(2作品が元々成人向けアンソロジーに収録されたもの)、先生が連載されていた頃から『百合姫』誌上でもアダルティな描写が増えたように思います。
そういった記念碑的な作品であることももちろんですが、百合SF・日常系百合としても楽しめる作品が多いので、ぜひ手に取って下さい。(2025/12/06) -
柴山全慶 無門関講話
光を求めて
柴山師は禅的体験をしばしば「深い絶望を超えるような体験」とおっしゃっています。またいたずらに公案を思弁的・倫理的に解釈することを戒めています。
本書はもともとアメリカの知識層に向けた提唱が元になっています。たとえば一見すると罵倒としか思えない無門師の先師への賞賛であり、禅の初心者が躓くであろう部分を補足していますが、決して回答が示されていません。それは読者が全存在を傾けて導き出すものでありましょう。
『無門関』の解説書はいくつかあります。自分の師や宗派に合せて選ぶのがベストとは思いますが、そういった縁のない方は本書を手にするのがいいでしょう。どうか一筋の光が得られんことを。(2025/08/27) -
慈雲尊者提唱『金剛経』の真髄 『金剛般若経講解』を読む
密禅一如
一部の宗派を除き仏教では「戒(律)・定(禅)・慧」の三学兼修が求められます。真言宗で重用される『菩提心論』でも「三昧地(禅定)に達することで即身成仏(生身のまま覚りを得る)できる」と説かれ、尊者自身、道場観(密教の瞑想法)を通し自らの過ちに気付かれました。禅への関心は深く禅宗との交流もありました。
尊者が禅宗で重用される『金剛経』の講義を行ったのも当然でしょう。一段一段、仏典のみならず儒教や神道の経典を駆使して読み解いておられます。一見すると密教と無関係とも思われますが「すべての文字の中に仏教の教え(大日如来の声)が宿っている」という空海様の教えを思わせます。
密教と禅宗の融和が本作に示されているように思います。(2025/08/24) -
喜ばしき知恵(河出文庫 ニ1-1)
ニーチェ入門に
何からニーチェに入るかは人それぞれですが、後期ニーチェ思想は始まりであり主著『ツァラトゥストラ』とも関連が深い『喜ばしき知恵』が一番かもしれません。
内容も(回復期だったせいか)伸び伸びとしておりアフォリズム(断章)ですのでどこから読んでもいい。125番の「神の死」がそれ以外のアフォリズムも面白う。
さて本作はちくま学芸文庫・信太訳『悦ばしき知識』や講談社学術文庫・森訳『愉しい学問』などがありますが、河出文庫・村井訳は訳注がほとんどなく本文を読むだけで内容がこなれておりお勧めです。(2025/08/04)


復刊リクエスト投票
自己と超越 禅・人・ことば
【著者】入矢義高
増補 求道と悦楽 中国の禅と詩(岩波現代文庫 学術258)
【著者】入矢義高
併せて読みたいです。(2025/12/04)
兵法家伝書に学ぶ
【著者】加藤純一
岩波文庫『兵法家伝書』の副読本にしたいです。(2025/12/01)
沢庵和尚全集 全6巻
【著者】沢庵宗彭
特に法話の『安心法門』、儒教(朱子学)批判の『理気差別論』や医学書の『医説』など単独で単行本化する価値があると思います。(2025/12/01)
参同契葛藤集・宝鏡三昧歌講話
【著者】岸沢惟安 著 萩原得閑 編
なおネットで検索してもあまり情報が出ないので情報提供をしていただけると助かります。(2025/11/30)
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