大絶画さんのページ

レビュー
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ツァラトゥストラの深層(エピステーメー叢書)
神の死との対決
ユングはどこかで「ニーチェの分析をしてみたい」と書いていたそうですが、論文等で言及するのみでまとまった著作にはなっていなかったはずです。それはニーチェを襲った集合的無意識の強大さを感じ取っていたからかもしれません。
そして師の仕事は弟子に受け継がれました。ユング心理学を学ぶ前、ウェーバーや社会学を研究していた林氏は適任といえるでしょう。氏はその後『元型論』や『タイプ論』の翻訳を担当します。
さて『ツゥラトゥストラ』を読んだ方は3・4部の異常な雰囲気に圧倒されるでしょう。氏はそこに集合的無意識の発露を見出します。ニーチェは個人の意志で集合的無意識に対抗しました。しかしその末路が悲劇で終わることは必然です。そしてその悲劇はニーチェのみならずナチス・ドイツという形で引き継がれます。
序文で著者が語っているようにやや型通りにユング心理学を適用した嫌いはあります。とはいえ『ツゥラトゥストラ』の分析を通していかに無意識と調和するか、これは20世紀のドイツ人のみならず21世紀を生きる我々にも有益と考えます。(2026/02/01) -
カール・ヤスパースと実存哲学
ヤスパースとフランス
ヤスパース哲学の魅力は様々でしょうが、一つ特長を挙げるなら「交わり」の概念に代表されるように常に外部に開かれていることでしょう。
それはヤスパースの序文で二人の仕事ぶりを賞賛しつつも「一つの骨格に還元されてしまったことを残念に思う」と書きつつも「読者が私の著作に接近しやすく」と受け容れていることからも理解できるでしょう。
本作で取り扱われているのは前期ヤスパース哲学の『哲学』と関連する『理性と実存』『実存哲学』までです。しかしヤスパース哲学を支障はないでしょう。また佐藤氏をはじめとした訳者の仕事ぶりも素晴らしく大著『哲学』に挑む際、参考になるはずです。
なお解説によればデュフレンヌ、リクールともに後にヤスパースから離れていきますが、ヤスパースの基盤をしっかり受け継いだということです。どうか開かれたそして重厚なヤスパース哲学を堪能して下さい。(2025/12/29) -
ダキニ信仰とその俗信
ダキニ復権のために
雄山閣より刊行された新版『ダキニ天信仰と俗信』のレビューです。
ダキニ(ダーキニー、荼吉尼天)のオリジンは地母神ダーキンとされます。その後、暗黒神マハーカーラ(大黒天)の眷属となり、日本においては「狐が化かす」ことからダキニは悪神・邪神と結びつくようになりました。
マハーカーラが大国主命と結びつき福の神・大黒様となったことを考えると大きな違いです。
著者はダキニのルーツをたどりつつダキニの復権を望んでおられます。本書の復刊がダキニ信仰につながるよう語り継ぎましょう。(2025/12/06) -
イヴとイヴ(百合姫コミックス)
記念碑的作品
本件はGOTより刊行された新装版『イヴとイヴたち』のレビューです。
百合姫判に比べサイズが小さくなっていますが、2作の作品が追加で収録されトータルではお得になっているはずです。何よりも電子配信もなくなっていたので再び読めることが一番でしょう。
さて著者は主に成人向け作品で活躍されており(2作品が元々成人向けアンソロジーに収録されたもの)、先生が連載されていた頃から『百合姫』誌上でもアダルティな描写が増えたように思います。
そういった記念碑的な作品であることももちろんですが、百合SF・日常系百合としても楽しめる作品が多いので、ぜひ手に取って下さい。(2025/12/06) -
柴山全慶 無門関講話
光を求めて
柴山師は禅的体験をしばしば「深い絶望を超えるような体験」とおっしゃっています。またいたずらに公案を思弁的・倫理的に解釈することを戒めています。
本書はもともとアメリカの知識層に向けた提唱が元になっています。たとえば一見すると罵倒としか思えない無門師の先師への賞賛であり、禅の初心者が躓くであろう部分を補足していますが、決して回答が示されていません。それは読者が全存在を傾けて導き出すものでありましょう。
『無門関』の解説書はいくつかあります。自分の師や宗派に合せて選ぶのがベストとは思いますが、そういった縁のない方は本書を手にするのがいいでしょう。どうか一筋の光が得られんことを。(2025/08/27)


復刊リクエスト投票
ツァラトゥストラの深層(エピステーメー叢書)
【著者】林道義
処女作で若書きゆえに未熟な部分はあると思いますが『ヨブへの答え』にも比類すべき刺激的な作品です。
ニーチェそしてユング心理学に関心のある方に読んでいただきたいです。(2026/02/01)
青髭 愛する女性を殺すとは?
【著者】ヘルムート・バルツ 著 林道義 訳
ユング派の分析家・河合隼雄氏もどこかで「青髭」について言及していましたが、一冊の本にはしていなかったはずです。
本作は男性そして女性心理を理解する上で有意義な作品と考えます。(2026/01/27)
転移の心理学
【著者】C.G.ユング 著 / 林道義 磯上恵子 訳
心理療法論
【著者】C.G.ユング 著 林道義 編訳
とくに第6章「ナチズムと心理療法」を読んでみたいです。(2026/01/26)
個性化とマンダラ
【著者】C・G・ユング 著 林道義 訳
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