大絶画さんのページ
レビュー
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大乗仏典 15 世親論集
まず識より始めよ
龍樹をはじめとする中観派が言語(既成概念)の解体を通して執着からの解放(覚り)を目指したとするならば、世親たち瑜伽行唯識派は覚りや修行段階の言語化を目指したといえるでしょう。
彼らが取った手法は唯識すなわち「物事を認識している私はとりえず存在する」と認めることでした。それはデカルトの「コギト(我考える)」やフッサールの「判断中止(エポケー)」に通じる部分があります。
さて本書には世親による他派への反論である『唯識二十論』、『唯識三十頌』のスティマティ(安慧)の注釈『唯識三十論(釈)』、『三性論』と訳者・長尾氏の注釈と唯識の代表的な論書が収録されています。とくに中観と唯識の止揚を目指した『中辺分別論』が重要です。
講談社学術文庫『世親』と合せて読むことで唯識への理解が深まるはずです。(2024/07/27) -
大乗仏典 14 龍樹論集
言語習慣の解体
龍樹は釈尊以後最大の理論家といえます。彼は大乗仏教の二大柱・中観(空観)を完成させました。彼が中観を通して訴えたかったものは何でしょう。
それは言語習慣(既成概念)の解体といっていいかもしれません。例えば「日本人」「共産主義者」など言葉を聞く発生するイメージがあるでしょう。そのイメージは適切でしょうか。あなたが勝手に作り上げた像ではないでしょうか。そしてその像が自縄自縛を引き起こしてはいないでしょうか。
龍樹は主著『中論』をはじめ「否定する対象が存在しないのだから否定しようがない」など言葉遊びのような言い回しで言語の解体を促します。独特の言い回し故、虚無主義や否定主義のレッテルを貼られましたが、何々主義からの解放こそ彼の望みです。
さて本書に『中論』は含まれていませんが、中観関連の論書、道徳書が収録されています。講談社学術文庫『龍樹』と合せて読むことで中観の理論・実践が理解できるはずです。(2024/07/26) -
白隠禅師坐禅讃講話
衆生本来仏なり
坐禅の真髄を説いた書物は多々あれど真っ先に上げるべきは道元の『普勧坐禅儀』と白隠の『坐禅讃(坐禅和讃)』でしょう。
坐禅讃の歌い出しは「衆生本来仏なり」ですが「最初から仏ならばなぜ坐禅などするのか」と思われるかもしれません。本書は120ページほどの小著ですが、坐禅ににおける疑問や功徳・真髄が無駄なく説かれています。
まずは何より坐禅(あるいは白隠禅師の内観法)を始めるべきですが、時には禅師の坐禅讃を読み返してください。坐禅への熱意が強くなります。(2024/07/23) -
古代インドの神秘思想
ウパニシャッドの本質へ
『ウパニシャッド』は古代インド思想の頂点でありヨーガや仏教にも肯定・批判的に受け継がれています。その重要性は疑うまでもないでしょう。
とはいえ素人が教典を読み通す並大抵ではありません。本来なら師について学ぶものですが、いい概説書がほしいところで、本書はその標準といえます。
さて本書ではウパニシャッドの研究史を眺めつつ、『ブリハッド』『チャーンドギヤ』『カウシータキ』など初期の主要ウパニシャッドの記述から本質に迫っていきます。
祭祀・儀礼からいかに高度な哲学が生まれたのか、なぜそのような思想が必要なのか理解できるはずです。(2024/07/19) -
読書と人生
読書論の古典
現在はリスキニング(再学習)がささやかれています。そのためのアプリなど学習ツールも配信・販売されていますが、何よりも読書が基本でしょう。
さて著者は「学生時代のうちに読書の習慣をつける」よう書いています。また何を読むか・どのように読むか、簡潔ではありますが手堅くまとめられており読書論を学ぶ上で古典(スタンダード)といえます。
また読書論を超えて、師である西田幾多郎そしてハイデッガー(ハイデッゲル)など知識人との交流と知的好奇心を満たしてくれるでしょう。(2024/07/18)
復刊リクエスト投票
無の道 全9巻
【著者】藤本治
とくに『金剛経の話』と『宗門無尽灯論』を読んでみたいです。(2024/07/20)
仏ゾーン 全5巻
【著者】武井宏之
修験道: その教えと秘法 CDブック
【著者】伊矢野美峰
お地蔵さま
【著者】伊藤古鑑
太田久紀著『お地蔵さんのお経』を愛読していますが、こちらも読んでみたいです。(2024/07/13)
真言陀羅尼の解説
【著者】伊藤古鑑
真言(陀羅尼)解説は確かと考えられるので残していきたいです。(2024/07/13)
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