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著者 | 浜崎 洋介 |
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出版社 | 新曜社 |
ジャンル | 文芸書 |
ISBNコード | 9784788512634 |
登録日 | 2024/12/01 |
リクエストNo. | 77002 |
リクエスト内容
本書は、文芸批評家・演劇人・翻訳者・国語改革反対論者・保守論壇人などの顔をあわせ持つ福田恆存において、その基礎にある思考を発見し、様々な役割を可能にした思想の全体像を、その一貫した〈かたち〉の中に描き出そうとしたものである。
序章では、戦後の代表的保守論壇人である江藤淳・三島由紀夫・清水幾太郎などと福田恆存との差異を描くことで、まず福田を色づけされた政治イデオロギーから救い出すことを試みた。その上で、一章では戦前における福田恆存の作家論と保田與重郎との関係を跡づけ、近代が使嗾する〈自意識=イロニー〉をその限界まで追い込んだ初期福田の思考を追跡し、二章ではD・H・ロレンスを通じた福田の芸術・演劇論を論じながら、〈自意識=イロニー〉が駆動する「批評精神」の臨界で、ついに自然を「演戯」する「芸術行為」へと転回していった福田の足取りを見届けた。また、三章では、国語改革批判や60年安保闘争批判を支えていた保守的態度の構えなどを検討しながら、「芸術行為」のうちに生きられる〈全体性=自己を超えたもの〉を、私を超越した背後世界にではなく、私の輪郭を型どる「言葉」のなかに捉え返していった福田恆存の思考を跡づけた。
そして、以上の議論を通して本書は、福田恆存の思想の全体像を、その〈原点(イロニー)―転換点(演戯)―決着点(言葉)〉として見出し、「私」が他ならぬ「私」であるという事実のなかに既に過去という他者が、つまり〈自然・歴史・言葉〉という条件が生きられていることへの自覚と、その自覚が導く福田の実践倫理、あるいはユーモアのあり方を見定めようとしたのである。いいかえれば、本書は、福田の言葉を通して、近代的個人が人を信じ、愛することは可能なのかと問い、なお、その不可能性の自覚から、「近代」の原理に代わる価値を見出そうとしたということである。むろん、だからといって福田が、安易に超越性(神)を語ったということではない。むしろ福田は、浮動し、猜疑し、嫉妬する近代世界を前に、「伝統」という名の「宿命」を、そして、その盲目的受容のなかに生きられる人々との「附合い」を語った。その関係の手応えだけが、単なる超越的理念ではない絶対性(かけがえのなさ)を、物質的・社会的な「快楽」(社会的進歩・自由)ではない「幸福」をもたらすというのは、ほとんど福田恆存の確信だったのである。(浜崎洋介)
投票コメント
全1件
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福田恆存氏を知りたい。GOOD!1
ただそれだけです。
しかし、入手が困難。
メルカリ、アマゾンでも3万円以上と高値。 (2024/12/01)
読後レビュー
NEWS
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2024/12/01
『福田恆存思想の〈かたち〉』(浜崎 洋介)の復刊リクエスト受付を開始しました。
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