日下三蔵セレクト SFフェア 第4回
日下三蔵セレクト SFフェア 第4回

今回は筒井康隆特集の第二回。元々、役者志望だった筒井康隆は、学生時代に演劇同人誌にシナリオ「会長夫人萬歳」を発表しており、作家デビュー後も、長篇戯曲『スタア』を筆頭に、数多くの戯曲を手がけている。その中には、実際に上演されたものも多い。
復刊ドットコムで編んだ《筒井康隆全戯曲》は、これまでに書かれた戯曲、シナリオを可能な限り集め、関連資料を詰め込んだシリーズ。出版芸術社《筒井康隆コレクション》の戯曲バージョンだが、観て面白く、読んでも面白い筒井戯曲の集大成というべき内容になったと自負している。
復刊ドットコムで編んだ《筒井康隆全戯曲》は、これまでに書かれた戯曲、シナリオを可能な限り集め、関連資料を詰め込んだシリーズ。出版芸術社《筒井康隆コレクション》の戯曲バージョンだが、観て面白く、読んでも面白い筒井戯曲の集大成というべき内容になったと自負している。
- 本体価格:3,200 円(税込円)
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- 本体価格:2,800 円(税込円)
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筒井康隆 著 / 日下三蔵 編
第一巻には、前述の『スタア』を含む第一戯曲集『筒井康隆劇場 12人の浮かれる男』を第一部にそのまま収録。さらに関連するエッセイ、対談など十七篇を第二部に収めた。うち九篇が単行本初収録である。
第三部には既刊の戯曲集に未収録の作品五篇を収録。うち四篇が単行本初収録。ファンクラブの会誌に掲載されただけの作品など私自身も読んだことのなかった珍しいシナリオを、本にすることが出来て本当に良かった。
第三部には既刊の戯曲集に未収録の作品五篇を収録。うち四篇が単行本初収録。ファンクラブの会誌に掲載されただけの作品など私自身も読んだことのなかった珍しいシナリオを、本にすることが出来て本当に良かった。
筒井康隆 著 / 日下三蔵 編
第二巻には、第二戯曲集『筒井康隆劇場 ジーザス・クライスト・トリックスター』を第一部に収録。第二部には「ジーザス・クライスト・トリックスター」の公演に際して刊行された二冊のビジュアル・ブック、『スターログブックス 筒井康隆大一座公演全記録 ジーザス・クライスト・トリックスター』とカセットブック『筒井康隆大一座 ジーザス・クライスト・トリックスター』を、可能な限り原本に忠実に再現して収めた。
第三部には関連するエッセイ十三篇と、山口昌男、川和孝、山下洋輔の各氏のエッセイ、堀晃氏による筒井康隆インタビューを収録。第四部には、短篇集『串刺し教授』に収められた「シナリオ・時をかける少女」と、初めて活字になるイベント用台本「伝説の行方」を収録。後者は富豪刑事・神戸大助が登場する珍品。
第三部には関連するエッセイ十三篇と、山口昌男、川和孝、山下洋輔の各氏のエッセイ、堀晃氏による筒井康隆インタビューを収録。第四部には、短篇集『串刺し教授』に収められた「シナリオ・時をかける少女」と、初めて活字になるイベント用台本「伝説の行方」を収録。後者は富豪刑事・神戸大助が登場する珍品。
筒井康隆 著 / 日下三蔵 編
出版芸術社《筒井康隆コレクション》第四巻には、長篇『おれの血は他人の血』と連作短篇集『男たちのかいた絵』、いずれもヤクザの世界に材を採った二冊をメインに収めた。『おれの血は他人の血』はハメット『血の収穫』のパターンを踏襲したSFハードボイルドの快作。『男たちのかいた絵』は各篇のタイトルがジャズのスタンダード・ナンバーになっているシリーズで、それぞれ、同性愛、マゾヒズム、虚言癖、多重人格など、異常性格、異常性欲の持ち主が登場する。
1996年に『男たちのかいた絵』が豊川悦司主演で映画化された際、徳間書店から刊行された映画のスチール写真を大量に収めたノベライズ『写真小説 男たちのかいた絵』も収録。著者の花田秀次郎は長らく正体不明だったが、実は筒井康隆自身の別名義だったことが判明した。ノベライズを頼まれたものの、断筆中だったため、匿名で発表したとのこと。
第三部には単行本や全集に入ったきり文庫にならなかった短篇二本と未刊行短篇三本を収めた。第四部は既刊に続いて、筒井康隆が自身の同人誌「NULL」に発表した文章をすべて収める「筒井康隆・イン・NULL」。この巻には、第九号から最終号までの短篇、エッセイの他、会員名簿や投書欄などの資料も収めた。
1996年に『男たちのかいた絵』が豊川悦司主演で映画化された際、徳間書店から刊行された映画のスチール写真を大量に収めたノベライズ『写真小説 男たちのかいた絵』も収録。著者の花田秀次郎は長らく正体不明だったが、実は筒井康隆自身の別名義だったことが判明した。ノベライズを頼まれたものの、断筆中だったため、匿名で発表したとのこと。
第三部には単行本や全集に入ったきり文庫にならなかった短篇二本と未刊行短篇三本を収めた。第四部は既刊に続いて、筒井康隆が自身の同人誌「NULL」に発表した文章をすべて収める「筒井康隆・イン・NULL」。この巻には、第九号から最終号までの短篇、エッセイの他、会員名簿や投書欄などの資料も収めた。
筒井康隆 著 / 日下三蔵 編
第五巻には、本格ミステリ『フェミニズム殺人事件』と、私立探偵の調査を描く連作『新日本探偵社報告書控』の二長篇をメインに収めた。『フェミニズム殺人事件』は雑誌掲載時に行われた犯人当ての懸賞募集の企画ページも再録。
他に全集にしか入っていなかった小説版「12人の浮かれる男」と単行本初収録の短篇「女スパイの連絡」を収めた。広義のミステリに属する作品をまとめた一冊。
他に全集にしか入っていなかった小説版「12人の浮かれる男」と単行本初収録の短篇「女スパイの連絡」を収めた。広義のミステリに属する作品をまとめた一冊。
筒井康隆
最初に人気作家になったのが星新一だったため、初期のSFブームはショートショートブームに近いところがあり、第一世代作家のほとんどが、数多くのショートショートを手がけている。星新一を超える二千篇を書いている眉村卓は別格としても、小松左京、福島正実、豊田有恒らには複数のショートショート集があり、広瀬正、平井和正、光瀬龍、半村良といった長篇型の作家にもショートショート集があるのだ。
筒井康隆も昭和のうちに、A『にぎやかな未来』、B『笑うな』、C『あるいは酒でいっぱいの海』、D『くたばれPTA』の四冊を刊行している。このうち、Aは角川文庫、BとDは新潮文庫から新装版が出て入手可能となったので、品切れだったCを河出文庫から復刊した。単行本版の著者あとがき、集英社文庫版の山野浩一解説も再録。既刊から漏れたものを丹念に拾った作品集だが、「NULL」に発表された初期作品六篇が含まれており、ファンには見逃せない一冊である。
筒井康隆も昭和のうちに、A『にぎやかな未来』、B『笑うな』、C『あるいは酒でいっぱいの海』、D『くたばれPTA』の四冊を刊行している。このうち、Aは角川文庫、BとDは新潮文庫から新装版が出て入手可能となったので、品切れだったCを河出文庫から復刊した。単行本版の著者あとがき、集英社文庫版の山野浩一解説も再録。既刊から漏れたものを丹念に拾った作品集だが、「NULL」に発表された初期作品六篇が含まれており、ファンには見逃せない一冊である。
筒井康隆
『くたばれPTA』は「全集に初めて収録された作品」と「既刊の単行本に収録され、文庫化されずに全集に入った作品」をまとめたオリジナル編集の文庫であり、そのため既刊のA~Cとは作品が重複していない。
角川文庫のテーマ別傑作選に新発見の作品が一篇ずつ入ったり、私が編んだ《筒井康隆コレクション》でもかなりの未刊行作品を発掘できたが、後から集める読者に、数篇のために本を探してもらうのは申し訳ないと思っていた。そこで、既刊文庫と重複しない形で新たに編んだのが、『人類よさらば』である。「再編集本に初めて収録された作品」「既刊の単行本または全集に収録され、文庫化されずに再編集本に入った作品」「これまで一度も本になったことのない作品」を対象にしたので、文庫オリジナル編集の短篇集としては、かなりお買い得のはず。
角川文庫のテーマ別傑作選に新発見の作品が一篇ずつ入ったり、私が編んだ《筒井康隆コレクション》でもかなりの未刊行作品を発掘できたが、後から集める読者に、数篇のために本を探してもらうのは申し訳ないと思っていた。そこで、既刊文庫と重複しない形で新たに編んだのが、『人類よさらば』である。「再編集本に初めて収録された作品」「既刊の単行本または全集に収録され、文庫化されずに再編集本に入った作品」「これまで一度も本になったことのない作品」を対象にしたので、文庫オリジナル編集の短篇集としては、かなりお買い得のはず。
小林泰三
ベテラン枠として小林泰三の作品をご紹介したい。小林泰三は1995年に第二回日本ホラー小説大賞の短編部門を「玩具修理者」で受賞してデビュー。この時に『パラサイト・イヴ』で大賞を受賞した瀬名秀明もそうだが、この時期にはSFの新人賞が消滅していたので、SFを書きたい人は日本ファンタジーノベル大賞か日本ホラー小説大賞、またはライトノベルや架空戦記といった周辺ジャンルからデビューして、徐々にSFにシフトしていくしかなかった。
小林泰三はホラー、SF、ミステリを横断的に手がけ、ジャンルをミックスさせた作品も多い。どれも高い水準だが、ここではSF度の高いものをお勧めしておく。
『AΩ 超空想科学怪奇譚』の主人公は航空機事故で死亡するが、宇宙から飛来したプラズマ生命体によって生き返った。プラズマ生命体は主人公の肉体を光の巨人に変身させて、宇宙からの侵略者と死闘を繰り広げていく--。つまりこれは、日本で一番有名な特撮ヒーローの設定を、SFとして再構築した作品なのだ。大迫力の怪獣小説であり、ハードな設定の本格SFであり、容赦のない描写が読者を襲うホラーでもあるという、著者ならではの傑作である。
小林泰三はホラー、SF、ミステリを横断的に手がけ、ジャンルをミックスさせた作品も多い。どれも高い水準だが、ここではSF度の高いものをお勧めしておく。
『AΩ 超空想科学怪奇譚』の主人公は航空機事故で死亡するが、宇宙から飛来したプラズマ生命体によって生き返った。プラズマ生命体は主人公の肉体を光の巨人に変身させて、宇宙からの侵略者と死闘を繰り広げていく--。つまりこれは、日本で一番有名な特撮ヒーローの設定を、SFとして再構築した作品なのだ。大迫力の怪獣小説であり、ハードな設定の本格SFであり、容赦のない描写が読者を襲うホラーでもあるという、著者ならではの傑作である。
小林泰三
小林さんは2020年に58才という若さで亡くなったが、『時空争奪 小林泰三SF傑作選』は既刊短篇集から選りすぐった五篇に単著初収録の一篇を加えた作品集。表題作は、私と大森望さんがセレクトしていた創元SF文庫の《年刊日本SF傑作選》『超弦領域』にも採らせていただいた思い出深い一篇。
なお、創元推理文庫からは同じコンセプトで「小林泰三ミステリ傑作選」として『五人目の告白』も出ているので、併せて一読をお勧めしておきたい。
なお、創元推理文庫からは同じコンセプトで「小林泰三ミステリ傑作選」として『五人目の告白』も出ているので、併せて一読をお勧めしておきたい。
空木春宵
新鋭枠は空木春宵。《年刊日本SF傑作選》と連動して創設した創元SF短編賞で、幻想SF「繭の見る夢」が第二回の佳作となり、その他の候補作と共に創元SF文庫のアンソロジー『原色の想像力2』に収録されてデビューを果たした。
以後、SFに軸足を置きながらも、怪奇、幻想、探偵小説の風味が濃厚な作品を一貫して書き続けており、SFファンだけでなく、ミステリファンにも、ぜひ読んで欲しい作家である。2021年に第一作品集『感応グラン=ギニョル』、2024年に第二作品集『感傷ファンタスマゴリィ』が刊行されている。
以後、SFに軸足を置きながらも、怪奇、幻想、探偵小説の風味が濃厚な作品を一貫して書き続けており、SFファンだけでなく、ミステリファンにも、ぜひ読んで欲しい作家である。2021年に第一作品集『感応グラン=ギニョル』、2024年に第二作品集『感傷ファンタスマゴリィ』が刊行されている。