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レビュー
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わたぼうし翔んだ : 奈保子の闘病スケッチ
永遠の「純真な女の子」
この著作を読むと、河合奈保子本人が記述したことが分かる。多忙な人物や不真面目な者(タレントや政治家等)は往々にして代筆させるのである。この著作では、デビューまで住んでいた大阪の公団住宅などの情景が細かく記述されている。筆者は実際に現地に赴いたが、そこには彼女が描写する昭和50年代の風景が今でも記述通りに広がっていた。彼女の「秘密の花園」で筆者も時を過ごすことができたのだ。彼女の復帰からこの著作の上梓までに一年半弱を要している。関係者に脱稿を急かされたことだろう。多忙ながらも、彼女は「自分の」著作に拘ったのだと思う。
カバーは河合奈保子の妹・由佳里による、一人の少女と犬とが夕焼けの草むらを駆けている遠景の絵である。表紙を開くと最初に河合奈保子自身の物憂げな写真があるのみで、他に写真は無い。挿絵には妹によるイラストが数点あるのみである。ピンク色の帯には河合奈保子の写真とともに故・森光子の寄せ書きもあるが、広告としての帯が無ければ、実に素朴な装丁である。アイドル本として異色の作品であろう。筆者はこの著作を文芸書だと考える。
この著作には、転落事故に関する書物ながら河合奈保子の関係者への「愛」で満ちている。自らの不注意による事故だったこともあり自分を責めているのだが、一方では著作に登場する人物たち皆に感謝し、愛していることがひしひしと伝わってくる。特に彼女の家族への愛は特別であろう。家族愛を強く感じるのである。この家族愛、それが「河合奈保子」という稀有な麗しい性格の女性を生み出したのだ。
また、彼女は「良く泣く」ことを示唆している。関係者の証言によれば、彼女は人前で泣くことがほぼ無かったそうだ。しかし、彼女の顔は「泣き顔」である。著作の中で彼女はよく泣いている。事故によるコンサートの中止や一人暮らしの寂しさなどからである。我々の殆どは、コンサートや握手会を除けばメディアを通じてのみしか彼女に触れ合うことができなかったが、そこには「元気で明るい笑顔の奈保子ちゃん」があった。しかし、彼女はこの著作を通じて「私も普通の一人の女の子」、笑いもすれば悲しんだり泣いたりするんです、と伝えたかったのだ。河合奈保子は通例の「アイドル」「芸能人」にはなりたくなかった。自らそれに言及する記述もあるが、筆者が最もそれを強く感じたのはトイレに関する記述である。立ち上がれるようになって一番嬉しかったのが「トイレ」であったと。動けない入院患者が男女問わず最も嫌になるのが排泄行為であろう。彼女はそれをはっきり記述している。「アイドルはトイレをしない」考えれば有り得ない馬鹿げた思い込みであるが、それを壊す記述に芸能関係者は難色を示しただろう。飾らない彼女に筆者はさらに好印象を抱くとともに、河合奈保子は「アイドル(偶像)」ではなく、我々と同じ「人」でありたいのだと確信した。
なお、彼女が極めて不快感を顕わにしている箇所が一つだけある。初めての紅白歌合戦出場についてである。転落事故に遭遇したのがNHKホールであった。出場が事故の賠償としての取引ではないかと。敢えて記述したのは、お淑やかな彼女ですらこの噂(事実だったかもしれぬ)だけは決して容認できなかったからだと思う。
当時の彼女が考える将来についても記述されている。その後の彼女を知る読者は、オーストラリアのくだりでは驚くとともに、恋愛観のくだりでは悲しくなるのである。彼女の将来に関する記述のみならず「本当の歌とは何か?」という問いに関する記述でも感じるのであるが、彼女は音楽などの物事をよく考え、行動し改善しようとしていたと思う。ラジオであったか、尾崎亜美が「河合奈保子さんは賢い女性だった」と云っていた。この著作を通じて筆者も彼女に優れた知性と行動力とを感じるのである。
握手会で会った盲目や聾唖の男の子、退院後に投宿した旅館に彼女を見に来た子供たちの記述がある。そして、著作名の由来ともなったわたぼうしコンサート(障碍者によるコンサート)の観覧シーンの記述もある。河合奈保子は保母になりたかった。大好きな子供たち、そして自らもその一人になるかもしれなかった障碍者たちといった弱者への優しい眼差しや温かい想いが感じられる。後に彼女は、このわたぼうしコンサートや、KBS京都主催のチャリティー「かたつむり大作戦」などに出演者として参加したのだった。
河合奈保子は「オトナにはなりたくない」と明らかにしたことがある。保母になって子供と触れ合いたい、同じ子供であり続けたかった彼女。還暦が見えてきた現在でも「可愛い純真な心の女の子」なのだろう。河合奈保子の魅力の一つでもあり、「子供の温もり」が感じられる35年前のこの著作に旧さを感じない理由の一つでもある。いつかお会いしたい。(敬称略)(2018/10/07)
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