8 票
著者 | 日影丈吉 |
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出版社 | 東都書房 |
ジャンル | 文芸書 |
登録日 | 2000/11/08 |
リクエストNo. | 2208 |
リクエスト内容
ミステリ作家、日影丈吉の最高傑作。実に味わいぶかい長編。
あらすじ
銀座に都電がまだ走っていた頃の話である。正月明けの十七日、銀座裏の妾宅で女主の折竹雪枝が死んでいるのが発見された。最初はガス自殺と思われたが、銀座署の小柴刑事が調べてみると、不審な事件が立て続けに起きていたことが判る。折竹家の住人は主の雪枝に、十一歳の息子・幸嗣に、三人の女中、幸嗣の家庭教師の祖生、そして時々訪れる雪枝の旦那の保倉。この人たちの中に雪枝の死を望んだ人間がいるというのか。
小柴の調査書に続き、女中の中の最年長の乃婦が、女主人の死の背景を語る。雪枝は一年前から若い祖生と関係が出来ていて、そのことが保倉に知れて、一度は祖生が出入り禁止になっていたのだ。しかし、人見知りで晩生の幸嗣の成績が落ち込んでしまったため、もう間違いを起こさないという確約の下に、祖生を呼び戻していたのだ。保倉は祖生に願ってもない縁談を持ち込み、雪枝との仲を復活させないよう留意していた。
だがどうやら雪枝と祖生の関係は復活していたらしい。そして、雪枝は自殺未遂とも思える奇禍に二度も遭っていた。
そして死の夜の事情がだんだん明らかになっていく。実はその晩、近所でガス工事があり、一時的にガスが止められることになっていた。雪枝の部屋のガスストーブの火が消え、雪枝が中毒死することを知っていた者がいた……。
投票コメント
全8件
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この小説ほど、日影丈吉の長編の中で切ない孤独を感じさせる小説はありません。死の甘美さ、しかし、その甘美さは、「気づかないうちに死んでしまう」という死の中にあって、その死を死ぬ主人公にわれわれがせめてもの手向けに切に願わざるを得ないそれなので、つまり、われわれの孤独と死者の孤独がお互いに照り返し合って一層強まり、その頂点で(ということはわれわれがいよいよお互いに孤立した状態で)不可能な「連帯」が一瞬夢見られることを指して、われわれの生の本質的条件、すなわち孤独というのだ、と思わせられるのです。日影作品はそのため、時におそろしく残酷ですが(『内部の真実』『地獄時計』)、この作品はバランスが絶妙。 (2001/03/05)GOOD!1
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この長編は日本ミステリの到達点を示す、名作です。純文学をも凌駕する陰影深い心理描写は、他に類を見ません。地味な作家なので忘れられがちですが、決して現代の作品にもひけをとらぬ傑作だと思います。ぜひ多くの人に読んでいただきたい作品です。 (2000/11/08)GOOD!1
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『女の家』は、日影丈吉の作品のなかでも比較的メジャーなものだと思っていたので、復刊されていないことに意外な感じもした。GOOD!0
復刊を望みます。 (2002/01/30) -
(2001/10/19)GOOD!0
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日影丈吉の初体験でした (2001/10/07)GOOD!0
読後レビュー
NEWS
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2005/09/30
『日影丈吉選集 2』販売開始しました! -
2000/11/08
『女の家』(日影丈吉)の復刊リクエスト受付を開始しました。
復刊実現の投票はあなたの投票から。
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