日下三蔵セレクト SFフェア 第2回
日下三蔵セレクト SFフェア 第2回

今週は横田順彌さんの作品をお勧めしたい。星新一、小松左京、筒井康隆、眉村卓、光瀬龍、平井和正、豊田有恒、半村良ら、一九六〇年代から活躍していた作家を「日本SF第一世代」というのに対して、七〇年代に登場した人たちは「第二世代作家」と呼ばれている。田中光二、山田正紀、堀晃、かんべむさし、川又千秋、梶尾真治といった面々だが、横田順彌は、その有力なひとりである。
当初、破壊的なギャグとダジャレに満ちた「ハチャハチャSF」の書き手として注目を集め、『宇宙ゴミ大戦争』『脱線!たいむましん奇譚』『銀河パトロール報告』などの作品集を次々と刊行した。
一方で、趣味の古書蒐集の過程で発見した明治、大正、昭和初期の奇想天外な小説を「古典SF」と命名して名調子で紹介。横田さんの編んだ古典SFアンソロジーや紹介コラムをまとめた『日本SFこてん古典』によって光を当てられた作家・作品は数多い。
『海底軍艦』『武侠艦隊』などの著作で国産SFの祖と目される明治の冒険小説家・押川春浪への興味から、蒐集分野は明治期全般へと広がっていった。曾津信吾氏との共著による評伝『快男児押川春浪』(87年)では第9回日本SF大賞を受賞しており、以後、『明治バンカラ快人伝』(89年)、『熱血児押川春浪 野球害毒論と新渡戸稲造』(91年)、『〔天狗倶楽部〕 快傑伝』(93年)といったノンフィクションの力作を、立て続けに刊行した。
この流れは小説作品にも及び、『火星人類の逆襲』(88年)では、ウェルズの『宇宙戦争』に出てきた火星人が日本にもやって来て、押川春浪と天狗倶楽部の仲間たちがこれを撃退する、という新境地を拓いた。
〈冒険世界〉主筆の押川春浪、新進の科学小説家・鵜沢龍岳、警視庁の敏腕刑事・黒岩四郎、その妹で小説好きのおてんば女学生・黒岩時子。この四人を中心に、おなじみ天狗倶楽部のメンバーたちが加わって、様々な怪事件に挑むSFミステリの連作は、短篇集『時の幻影館』『夢の陽炎館』『風の月光館』、長篇『星影の伝説』『水晶の涙』『惜別の宴』の6冊が89年から95年にかけて刊行された。
当初、破壊的なギャグとダジャレに満ちた「ハチャハチャSF」の書き手として注目を集め、『宇宙ゴミ大戦争』『脱線!たいむましん奇譚』『銀河パトロール報告』などの作品集を次々と刊行した。
一方で、趣味の古書蒐集の過程で発見した明治、大正、昭和初期の奇想天外な小説を「古典SF」と命名して名調子で紹介。横田さんの編んだ古典SFアンソロジーや紹介コラムをまとめた『日本SFこてん古典』によって光を当てられた作家・作品は数多い。
『海底軍艦』『武侠艦隊』などの著作で国産SFの祖と目される明治の冒険小説家・押川春浪への興味から、蒐集分野は明治期全般へと広がっていった。曾津信吾氏との共著による評伝『快男児押川春浪』(87年)では第9回日本SF大賞を受賞しており、以後、『明治バンカラ快人伝』(89年)、『熱血児押川春浪 野球害毒論と新渡戸稲造』(91年)、『〔天狗倶楽部〕 快傑伝』(93年)といったノンフィクションの力作を、立て続けに刊行した。
この流れは小説作品にも及び、『火星人類の逆襲』(88年)では、ウェルズの『宇宙戦争』に出てきた火星人が日本にもやって来て、押川春浪と天狗倶楽部の仲間たちがこれを撃退する、という新境地を拓いた。
〈冒険世界〉主筆の押川春浪、新進の科学小説家・鵜沢龍岳、警視庁の敏腕刑事・黒岩四郎、その妹で小説好きのおてんば女学生・黒岩時子。この四人を中心に、おなじみ天狗倶楽部のメンバーたちが加わって、様々な怪事件に挑むSFミステリの連作は、短篇集『時の幻影館』『夢の陽炎館』『風の月光館』、長篇『星影の伝説』『水晶の涙』『惜別の宴』の6冊が89年から95年にかけて刊行された。
- 本体価格:2,600 円(税込円)
- 本体価格:1,200 円(税込円)
- 本体価格:1,300 円(税込円)
- 本体価格:1,800 円(税込円)
- 本体価格:900 円(税込円)
- 本体価格:640 円(税込円)
- 本体価格:800 円(税込円)
- 本体価格:1,000 円(税込円)
横田順彌 著 / 日下三蔵 編
柏書房の《横田順彌明治小説コレクション》は、この6冊を短篇集と長篇1冊ずつを組み合わせて合本にしたもの。古き良き明治を舞台に、SFとミステリの楽しさがたっぷりと味わえる傑作シリーズである。
番外編として長篇『冒険秘録 菊花大作戦』(94年)と短篇集『押川春浪回想譚』(07年)もあるが、いずれも入手困難なのが残念。なんとか文庫化したいと思っている。
番外編として長篇『冒険秘録 菊花大作戦』(94年)と短篇集『押川春浪回想譚』(07年)もあるが、いずれも入手困難なのが残念。なんとか文庫化したいと思っている。
横田順彌 著 / 日下三蔵 編
自転車で世界を放浪した実在の探検家・中村春吉を主人公にした秘境冒険SFのシリーズは、竹書房文庫で文庫化することが出来た。第一作の『幻綺行 完全版』は(90年)の単行本に未収録だった2篇を加えて再編集したもの。続く『大聖神』はSF長篇、『西郷隆盛を救出せよ』は中村春吉がシベリアの監獄に幽閉されていた西郷隆盛を救いに行くという冒険長篇。
横田順彌 著 / 日下三蔵 編
このシリーズでは装丁の坂野公一さんが凝ってくれて、往年の児童書の、しかも古本にしか見えないデザインの本にしてくれた。横田さんにも見せたかった。
横田順彌
『〔天狗倶楽部〕 快傑伝 元気と正義の男たち』は私の編著ではないが、前述した93年版の再刊。NHK大河ドラマ「いだてん」に天狗倶楽部が登場したことで、にわかに注目を集めて復刊された。
横田順彌 著 / 日下三蔵 編
『平成古書奇談』は雑誌連載のまま埋もれていた連作を、没後に発掘したもの。古本屋を舞台に、SF、ミステリ、ホラー、人情ばなしが入り乱れて展開する横田さんらしさにあふれた一冊。絶版だが、これが気に入った人は、やはりちくま文庫に入った短篇集『古書狩り』も探して欲しい。
梶尾真治 著 / げみ イラスト
梶尾真治も横田順彌と同じく、日本SF第二世代作家を代表する一人である。この二人の「SFマガジン」初登場は、同じ71年3月号であった。
梶尾さんはロマンチックな本格SFからドタバタSFまでを自在に書き分けて、「短篇の名手」と言われたが、『美亜へ贈る真珠 新版』はリリカル路線の傑作を集めた一冊。これが気に入ったら、『おもいでエマノン』に始まる《エマノン》シリーズに進むことをお勧めしたい。
梶尾さんはロマンチックな本格SFからドタバタSFまでを自在に書き分けて、「短篇の名手」と言われたが、『美亜へ贈る真珠 新版』はリリカル路線の傑作を集めた一冊。これが気に入ったら、『おもいでエマノン』に始まる《エマノン》シリーズに進むことをお勧めしたい。
梶尾真治
長篇SFにも力作が多く、第12回日本SF大賞を受賞した『サラマンダー殲滅』は、宇宙をまたにかけたヒロインの復讐行を壮大なスケールで描くアクション大作。読み始めたらやめられない面白さなので、ご注意あれ。
柴田勝家
柴田勝家は2014年、第2回ハヤカワSFコンテストに投じた長篇『ニルヤの島』が大賞を受賞してデビュー。ペンネームは学生時代の渾名をそのまま使ったもので、さすがにマズいといったんは編集者に止められたものの、早川書房に現れた柴田さんの風貌が、あまりにも戦国武将然としていたので、やっぱりそのまま行きましょう、ということになった。
今のところ、長篇のベストは南方熊楠が活躍する伝奇SF『ヒト夜の永い夢』だと思うが、短篇集『アメリカン・ブッダ』『走馬灯のセトリは考えておいて』も秀作ぞろいだし、どんな新作が飛び出してくるか分からない。要注目の新鋭である。
今のところ、長篇のベストは南方熊楠が活躍する伝奇SF『ヒト夜の永い夢』だと思うが、短篇集『アメリカン・ブッダ』『走馬灯のセトリは考えておいて』も秀作ぞろいだし、どんな新作が飛び出してくるか分からない。要注目の新鋭である。