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レビュー
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新装版 わたぼうし翔んだ -奈保子の闘病スケッチ-
奈保子さんの才能がここにも
1980年代終わりごろ、当時すでに絶版だったため国会図書館で閲覧させてもらったのですが、当時の私はアーチスト転身時代の奈保子さんファンで、アイドル時代のことはさほど興味もなかったのか、チラ見で終わっていました。こんな形で再会できるとは長く生きてみると面白いことが起こりますね。改めて復刊に努力いただいた方々に感謝申し上げます。
読了してみて、彼女が10代で描いていた未来像のままに生きて来られたように見えて、彼女の人間性への興味と尊敬が新たになりました。習ったことを徹底的に体に染み込ませるような素直さ、一方で、芸能界に染まらないと誓ってそれを押し通した(と見える)意思の強さ。こういう人間性があって、若かりし頃の未来像を実現できたのかと思えました。そうは言っても、その後の10年以上に渡る芸能活動では、いろいろ悩みや葛藤もあったのでしょうね。そのあたりの彼女の心境もまた何かで読んでみたいなぁーなどと思ったりしています。いずれにしても現在の彼女の状況は、彼女が望んだものに近いものではないかと思うことができました。
個人的な希望でいえば、奈保子さんには楽曲作家として復帰してほしいと思っています。彼女の(作詞家の売野さんの言葉を借りれば)人間離れした歌唱をもうオリジナルで聴けなくなるのは残念ですが、アイドル時代を含めて素晴らしい作品群を残してくれているので、これ以上は望むことはしません。そんなことを考えさせてくれる一冊になりました。(2021/09/04)
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わたぼうし翔んだ : 奈保子の闘病スケッチ
【著者】河合奈保子