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パンのみによるにあらず




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著者 Y・ドゥヂーンツェフ
出版社 講談社
ジャンル 文芸書
登録日 2012/12/13
リクエストNo. 56648

リクエスト内容

発表当時、ソ連官僚主義の欠陥をえぐりだす問題作として話題になった。
主人公ロパートキンは、パイプ鋳造機械の改良を考案するが、パイプ製造に寄生して生活する官僚グループの妨害によって、新機械製造を阻止される。すぐれた発明も、その実際の製造が一握りの官僚の認可がない限りできない体制では、簡単に握りつぶされてしまう。
巨大企業の独占と国家による許認可という壁が、個人の自由な起業を阻害している現代に復刊させる意義は大きいと考える。

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投票コメント

全1件

  • ある事業を一企業が独占し、官僚の許可なしに、別の構想を実現する道のない体制下では、この小説のような事態は常に起こり得る。本書を読めば、福島の原発事故は「原子力村」による独占が招いた人災に見えてくる。ぜひ復刊させてほしい一冊である。 (2012/12/13)
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読後レビュー

全1件

  • 個人の自由が進歩のカギである

    タイトルは新約聖書マタイ伝第4章の一節にもとづく。

    主人公ロパートキンは、中学(日本で言えば高校)の物理教師だったが、工場見学に行ったとき、鉄パイプをまるきり手工業的に製造していたのを見て、シリンダーに溶けた鉄を流し込んで回転させ、遠心力で薄く延ばすことでパイプを製造する方法を思いつく。彼は独学で機械図案の製図を学び、自分のアイデアを製図して、国立鋳造機設計研究所に提案した。

    ところが、従来の製法よりも20倍の生産が見込める彼の新発明機械は却下されてしまう。

    その生活がパイプ製造に結びついている人たちの大きなグループがあり、自分たちの利益を損なうような提案を斥ける仕組みができていたのだ。技術省次官シューチコフはロパートキンにこう説明した。
    「その連中はなにかこう、どえらいスキタイ人の町みたいなものをこしらえましてね、そいつに壁を張りめぐらして、マルサス流に暮らしてるわけですよ。その町は見えませんが、それは存在しているんです!キーチェジの町みたいに、ほんとにそうなんですよ!」

    キーチェジというのは、ロシアの昔話で、神の思し召しで湖底に沈められ、派閥的宗門の人たちが当局の追及を逃れて平穏無事に暮らしたという空想の町のことです。

    新発明が却下されても、ロパートキンは、物理教師に戻って月並みな生活を営む道を選ばなかった。
    「人間はこってりした食事や安楽欲しさに侮辱を忍んだり、うそをついたり、裏切ったりするために生まれたのではない。太陽にあたためられた虫のよろこびは、人間の運命ではない」
    人はパンのみで生きるものではなく、人間らしい、生きるよろこびの感じられる仕事をして生きるのだ。

    パイプの大量生産は国家的要請であり、ロパートキンの機械に着目して発注する工場長がいた。これが漏れると例のキーチェジの大学者たちの邪魔が入るので「国家機密」ということにして厳秘で作業が進められた。ところが、ささいなことでロパートキンは国家機密漏えい罪で訴えられ、シベリア送りになってしまう。

    これを読んで、日本の「原子力ムラ」の話しを思い出した。その村には、原子力に寄生して利益を得ている学者や電力会社、官僚が暮らしている。どれほど科学的に正しいことでも、その村の利益を損なう提案は認められない。村の利益を損なうと考えられた者は、県知事であっても冤罪をでっち上げられて「塀の中」へ追放される。

    ソ連のように、国営企業以外が認められず、官僚の許可なしに新発明を実現する道のない国ではこうしたことがまかり通ってしまうのだ。

    かつて軍部が全体主義を鼓吹したとき、憲法学者美濃部達吉博士は
    「個人主義および自由主義は、明治維新以来のわが帝国の大国是であって、維新のはじめにおいて、すでに各国人を封建的主従関係から解放し、家禄世襲の制を廃し、
    各個人の自由を尊重し、各個人をして自由に自己の職業を選択することを得せしめ、文武の官職もまた各個人をして自己の材能に応じて等しくこれに就くことを得せしめ」たことを指摘し、さらに「明治維新以来世界の驚異となったわが国の急速なる進歩は、主としてはこの個人主義、自由主義の賜ものにほかならない。(中略)個人的な自由こそ実に創造の父であり、文化の母である」と述べた。

    もしも、東電以外に発電する自由が認められていたらどうだったろうか?津波の危険性を指摘する学者は震災前からいたのだ。

    福島第1原発の被害総額は賠償だけで十数兆円、これと収束の費用、解体撤去の費用、除染をして再び人が住めるようにする費用、これらを足し合わせると50兆円では済まないだろうと言われている。これに対し、東電の年間売り上げはわずか5兆円。年間売り上げ5兆円の企業が1度に50兆円の損失を出したら、普通倒産する。複数企業が発電事業をしていたら、1件の事故で倒産するようなリスクを東電は冒しただろうか?

    東電以外の発電会社が火力発電所を設けていて、震災後早期に発電量を増やして計画停電などの事態を避けるように活動していたら、東電は倒産し、原発に手を出さなかった企業が業績を伸ばすことになっていただろう。

    復刊してほしい1冊です。 (2012/12/13)

    GOOD!0
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NEWS

  • 2012/12/13
    『パンのみによるにあらず』(Y・ドゥヂーンツェフ)の復刊リクエスト受付を開始しました。

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