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レビュー
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CHIHIRO’S CHILDREN Happy Time ちひろの子どもたち ハッピータイム
ファンの方にお勧めします
私は子供のころ、いわさき・ちひろ氏の絵が大好きでした。ふわっとした感じの優しい絵で、彼女が好きなマリー・ローランサンとその点では共通する絵柄です。ただし、いわさき氏は子供の絵が中心です。子供たちの優しいしぐさを見て、子供時代の楽しかった記憶を呼び戻すにはうってつけの本だと思います。また、彼女の画家としての心情を記した文章が幾つもあり、彼女がどういう気持ちで子供たちを描いていたのかを理解する手掛かりにもなると思います。
一方、職業画家としての、いわさき・ちひろ氏の側面を見る事も出来ます。ある程度絵を描く経験のある方なら、彼女の「作品」が2つのパターンに収まっていることが分かると思います。一つは鉛筆をつかった線描(に淡い色を付けたもの)、もう一つは透明水彩だけで若干濃い色を使って描いたものです。これは市場の要求(いったん受けると分かった商品を踏襲しようとする傾向)を反映したものであると同時に、彼女自身がその要求を断り切れなかった、あるいは、それ以上の発展を求めていなかったことを意味しています。
女性が職に就くことが難しかった時代ではどうしようもないことではあります。ただ、もし、いわさき・ちひろ氏が彼女自身の能力の発展を願っていたなら、勇気をもって自分の道に踏み出して欲しかったとも思います。
最後に一点。この本の英題は"CHIHIRO'S CHILDREN HAPPY TIME"となっているのですが、少し不思議な訳かなと思いました("Children's Happy Times by Chihiro Iwasaki"が自然かもしれません)。(2024/12/14)
復刊リクエスト投票
デッサンの道しるべ
【著者】K.ニコライデス 著 / 北村孝一 訳
『本書は、きわめてユニークな一貫した方式によってデッサンの、ひいては絵画全般の基礎を体得させようとする入門書で、アメリカでは、発売後40余年間に50万部を超えるロングセラーとなり、今日なお高い評価を得ています。』
本書はおそらく1920~30年代にアメリカで出版されたものであり、上記のように極めて多くの画家の支持を得た名著です。内容はとても本質的で、翻訳に数多くの問題があるものの(例えば『ドラペリー』という表記があるが、これは"drapery" = 布のひだ、発音はドレーパリーが正しい)、描くことに興味を持つ人であれば解読できると思います。
私が知る限りデッサンの教科書と言えるものはこれ以外無く、現在国内で印刷されている、描く能力に欠ける著者による教科書が引き起こす弊害をなくすために復刊が必要だと思います。(2023/11/08)