グリーンさんのページ レビュー 尾崎豊が伝えたかったこと 須藤晃 29曲への二人の思い 随所で、涙が落ちる。 この本はなぜこんなにも切なく感じるのか。 音楽プロデューサーとシンガーソングライターという二人には、年の差が10以上あることもあいまって、一定の距離感から常に緊張関係にある。 その二人が問答のような対話をへて、作品として結実させた29曲。 1曲について4ページ分割いて、詞、写真、本文(3段組みで1ページ分)を載せている。 横組み仕様で、文中のキーセンテンスが小見出しとして本文ページの上にアクセントとして載っていて、書籍だが雑誌感覚で読みやすい。 切なさは、おそらく執筆された時期が関係していると思うが、この本の発行は、亡くなって3年後の1995年4月。 彼の死を受けとめていく上で、とても微妙な時期だと推測する。 著者自身、それは意識していないだろうけど、読者が内容に感情移入しやすいトーンでつづられている。 その内容が普遍性をおびていると感じるのは、著者が「作品についてはこうやって克明に説明したかった」というプロデューサーとしての責任からか、過去の自分とも正直に向き合っているからだと思う。 当時のことを反省もしつつ、けっこう詳細に語っている。 曲は、一曲一曲、思いから生まれた結晶。 そこには試行錯誤の時間がある。 そんな時間のなかで、彼の本質的な質問に、著者である当時30歳前後のプロデューサー須藤晃はどう答えてきたのか。 ・「須藤さん”ブルーカラー”ってどういう意味ですか?」 ・「尾崎と相当話した」事とは? ・デビューアルバムを「レコーディングしようと最終的に決断した」曲とは? ・「なんで須藤さんは、サラリーマンやってるんですか?」 ・彼が「退廃的な考え方」に惹かれていく過程について ・「歌ってほしいことと、彼が歌いたいことのギャップ」について ・「アーティストとしての苦悩も決意も、この歌には全部出ている」という曲とは? 彼との数々の具体的なエピソードが、息づかいとともに読み手に伝わってくる。 「愛を信じます」から「僕は何も信じない」まで、音楽制作を支えてきた一番近しい人物からみた、十代の尾崎豊の心の軌跡。(2012/04/21)
レビュー
尾崎豊が伝えたかったこと
須藤晃
29曲への二人の思い
随所で、涙が落ちる。
この本はなぜこんなにも切なく感じるのか。
音楽プロデューサーとシンガーソングライターという二人には、年の差が10以上あることもあいまって、一定の距離感から常に緊張関係にある。
その二人が問答のような対話をへて、作品として結実させた29曲。
1曲について4ページ分割いて、詞、写真、本文(3段組みで1ページ分)を載せている。
横組み仕様で、文中のキーセンテンスが小見出しとして本文ページの上にアクセントとして載っていて、書籍だが雑誌感覚で読みやすい。
切なさは、おそらく執筆された時期が関係していると思うが、この本の発行は、亡くなって3年後の1995年4月。
彼の死を受けとめていく上で、とても微妙な時期だと推測する。
著者自身、それは意識していないだろうけど、読者が内容に感情移入しやすいトーンでつづられている。
その内容が普遍性をおびていると感じるのは、著者が「作品についてはこうやって克明に説明したかった」というプロデューサーとしての責任からか、過去の自分とも正直に向き合っているからだと思う。
当時のことを反省もしつつ、けっこう詳細に語っている。
曲は、一曲一曲、思いから生まれた結晶。
そこには試行錯誤の時間がある。
そんな時間のなかで、彼の本質的な質問に、著者である当時30歳前後のプロデューサー須藤晃はどう答えてきたのか。
・「須藤さん”ブルーカラー”ってどういう意味ですか?」
・「尾崎と相当話した」事とは?
・デビューアルバムを「レコーディングしようと最終的に決断した」曲とは?
・「なんで須藤さんは、サラリーマンやってるんですか?」
・彼が「退廃的な考え方」に惹かれていく過程について
・「歌ってほしいことと、彼が歌いたいことのギャップ」について
・「アーティストとしての苦悩も決意も、この歌には全部出ている」という曲とは?
彼との数々の具体的なエピソードが、息づかいとともに読み手に伝わってくる。
「愛を信じます」から「僕は何も信じない」まで、音楽制作を支えてきた一番近しい人物からみた、十代の尾崎豊の心の軌跡。(2012/04/21)