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復刊リクエスト投票

  • 想師

    【著者】灰崎抗

    三部作となって完結してすべて電子書籍で出版中なのですが!
    未成年に届かないんです!
    電子決済はハードルが高いのです!
    多くの人に読んでほしいです!
    よろしくお願いします!(2026/02/12)

レビュー

  • 想師

    灰崎抗

    真実は無数

    世界を『廻り込み』異なる視点から捉え再構築することで、あらゆる仕事を遂行する『想師』という者達。その一人である草薙遼はある依頼から人類の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。その戦いの中で自らの罪と向き合いながら……――
     この物語には続刊があります。
     不明瞭なまま世界を蝕む存在に、どうすれば立ち向かえるのかを描く【想師Ⅱ~悪魔の闇鍋~】と世界の崩壊へ草薙『自らの手で』導いてしまう完結編【想師Ⅲ~創世二人羽織~】が電子書籍で現在出版中です。

     ※以下ネタバレを含みます

     想師Ⅱの出版前の副題が「善と悪の定義」であることを知ってる人は知ってると思います。作者のサイト上に書いてあるので。

     『想師』の中では善悪の定義が流動していて、仲間が敵だったり敵が仲間だったりと変化していきますが、その中でも注目したいのが殺人と死の受け入れ方の変化なんですよね。

     主人公の草薙遼は高校生時代に自分の平和な世界を壊しています。そのことを「悪」だと思ってるし許されても罪は消えないと断じている。だけど作中では殺人が「善」とまではいかないけど「解決案」となる瞬間が何度も訪れます。死にそびれたまま殺戮を続ける九鬼に渡した引導しかり、死ねないまま苦しみつづける念が集まったヌーネしかり。自分の恋人(彩香)を瀕死にさせられて言うのが「殺してやる」って言葉なんですよ。

     拒絶を取り払うことはいずれ来る「死」を「罰」ではなく、誕生に対応する生の「帰結」として受け入れることにも繋がるわけですね。
     でも死と殺人を完全に受け入れてしまうと今度は世間の倫理観とずれてしまう。救済を謳うくるった連続殺人鬼になってしまう可能性が出てくる。
     殺戮を「悪」死を「罰」として逃げつづけなければ、それは生物として破綻してしまいます。

     草薙は実際、自分が死ぬ時を考えたり、どうでもいい人間を見殺しにしたり、死を殺人の因果によって受ける応報と解釈したりする時があります。草薙の「被害者への嫌悪」が出てるのが無印の彩香との出会いの回想、飛び降り自殺した少年への嫌悪だと思いました。
     自殺は自分への「加害」であり、いくつかの宗教では禁じられている悪ですが、同時に自身が「被害者」になる行為でもある。

     彩香は父の交通事故で『理不尽な死』の存在を知っていますし、駆け落ちだった父と母に着せられたであろう『冤罪』を知る人です。ついでにカトリックです。

     自らの殺人が正義の鉄槌であることを否定し、断罪者ではなく「ただの殺人鬼」と訂正しつづける。
     行為と結果を必然性で紐づけない。それを何度も自身に言い聞かせる。
     不必要な犠牲を避け、資料を集め相手を見定めるルーチンワークによって。
     これはある種の修行だと思います。悟りに至る修行。
     神へ至る道なんですよ。想師という職能は。

     草薙は世界や自分の立ち位置への不安を「彩香を守る」という軸で固めている。自分が死ぬときは同じ言葉をかけてほしいと先の出会った時の回想で言っている。これはですね、死(≒生の帰結)の際に「許されたい」という、こう、目的のためにはですよ。なんでもできる男なんですよ。

     なんでもできて最終的にはなんにでもなりえたのに、不安を解消できたのに、やはりふらふらした「人間」として、最愛の人と生きていくことを選ぶんですよ。

     もうね、人生。仏道。仏じゃなくて神か。
     超素晴らしい。尊い。最高。だから何度でも読んでほしい。
     レビューをお読みいただきありがとうござました。(2026/02/12)

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