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著者 | 矢田 浩 |
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出版社 | 講談社 |
ジャンル | 文芸書 |
ISBNコード | 9784061497788 |
登録日 | 2011/10/26 |
リクエストNo. | 54126 |
リクエスト内容
鉄理論=地球と生命の奇跡
静岡理工科大学名誉教授で金属工学を専門とする著者が、鉄を切り口に生物論、環境論、文明論を繰り広げる。
まず、鉄の特徴を説明しながら、鉄が地球の生命の誕生・発展を支えてきた「奇跡の元素」であることを解説する。地球は、実は鉄の存在量が30%を超える「鉄の惑星」である。様々な化合物中の窒素、酸素、硫黄原子と結合しやすく、磁性を持つといった鉄の優れた機能によって、生命は発展し、人類の文化も進化してきたという。専門的で難解な話も出てくるが、日ごろ、あまり注目せずに利用している鉄が、生命と深いかかわりを持つという事実は新鮮で面白い。
海洋への鉄散布でCO2減少
その生命に欠かせない鉄が、地球温暖化防止の切り札として注目を集めているというから、さらに興味をそそられる。
鉄を海に散布し、植物プランクトンを増やすことで空気中のCO2を吸収させる試みが進んでいるのだ。窒素などを含む栄養分が多いにもかかわらず、植物プランクトンが大発生しない海域は、鉄不足が原因とする仮説を基にした手法だ。
1993年以降、世界各地で海洋鉄散布実験が行われ、実際にプランクトンが増加した例や、CO2量が減少した例が報告されているという。
大気中のCO2固定技術は、温暖化が進む地球で今、最も必要とされている技術の1つ。海洋鉄散布は、相対的に低コストで効果が期待でき、実現可能性の高い手法の1つであるのは確かなようだ。
だが、当然批判もある。その代表が「生態系への影響」である。実際、日本がかかわった実験で、大増殖した珪藻の種類がもともとあった「羽状類」から「中心類」主体に変わる事態も起きた。
これに対し、著者は「生命は、誕生したときから自分で生態系を変えてきた」「劣化してゆく生態系を変えなければ、人類は生き延びられない」と主張するが、この点はやや乱暴に感じる。新しい技術によって得られる利点とリスクを慎重にてんびんにかけながら、研究を進め、施策の実現を検討すべきだろう。
既に「鉄理論」は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)でも議論され始めているという。今後、より大規模な実験や綿密なシミュレーションが行われるかもしれない。著者の主張通り、「鉄が人類を救う」方向に向かうのか、注目したい。(amazonの商品説明より転載)
投票コメント
全1件
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筆者の鉄理論は、生命現象を考える上で普遍的なものです。新書というコンパクトなかたちでの情報提供をいまいちどぜひともお願いしたいと思います。 (2013/01/06)GOOD!0
読後レビュー
NEWS
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2011/10/26
『鉄理論=地球と生命の奇跡』(矢田 浩)の復刊リクエスト受付を開始しました。
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