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書物復権によせて


◆ 書物復権によせて

成田共助
[法政大学出版局]

 恒例の〈書物復権〉8出版社共同復刊もおかげ様で第16回目を迎えます。小部数の専門書を、もう一度蘇らせるこの事業は、多くの読者に支えられ、継続した企画として評価を受けるようになってまいりました。
 近年の出版業界は売上高において漸減を続けており、20年前の市場規模に戻ってしまったと言われています。活字メディアの環境変化、購読スタイルが多様化しつつも、復刊を求める読者の声は依然として強いものがございます。
 今年も皆様からのリクエストをいただき、復刊書目が決まりました。また昨年に続き「オン・デマンド出版」による復刊もいたします。以下、いくつかのリクエストの声をご紹介します。
 ・この本の存在を知らなかったことを残念に思っています。目の前にあったらすぐ読みます。
 ・図書館にあるとしても、再び出版してもらいたいです。何度も何度もページをめくったものです。
 ・以前、立ち読みしてそのまま買わなかったことを悔いています。(高かったので迷ってしまったことを後悔…)
 ・古典ですが、名著です。国家・政治が混乱している現在には、知的清涼剤になり得る本です。
 他、多数のメッセージと貴重なご意見をいただいておりますが、今の時代、「色褪せないもの」「流されないもの」が求められているように思います。


東日本大震災から1年…
 東北の再建・復興の歩みはまだまだ遠く、災害廃棄物(瓦礫)処理は、遅々として進んでいません。そして福島原発事故の影響が大きく立ちはだかっています。
「原発事故は、不確実性の象徴とし、国際社会の混沌とした出来事(気候変動、グローバル化した金融市場・テロリズム等)は、近代社会が生んだ限界のないリスクであり、そのリスクの分配を計ることの大切さを指摘する。」~『危険社会-新しい近代への道-』ウルリヒ・ベック著(1998年:小局刊)
 いつかは他の地域を襲うかもしれない大規模な災害や瓦礫処理問題にしても被災地を人ごとに見るのではなくいかに自分の問題として捉えるかが問われています。また、隠された利権構造や誰も責任を取らない無責任システムを見直すことに対して、無知・無関心では何も生み出されません。書物を通しての知力と人間力が必要とされています。
 また、電子書籍化の流れは不可避だと思われますが、電子書籍時代の図書館はどうあるべきか、配信事業者との契約交渉など、まだ課題は残ります。
 電子書籍が話題になる中で、紙の本の重要性・利便性(本の力・本の魅力)も改めて再確認され、それぞれが補完しあい、お互いに良さを生かした広がりに期待します。そして本好きな読者が改めて書店の魅力(店頭での書籍と偶然に出会う機会)を再認識してくださることを願っています。



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