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書物復権によせて


◆ 書物復権によせて

持谷寿夫
[みすず書房]

■〈書物復権〉共同復刊 新しいかたちへ


 〈書物復権〉共同復刊事業、15年目を迎えました。15年前と同様、書物を取り巻く状況の不透明さは変わりませんが、今までこの事業で復刊できた600点を超える品切れの書物が、本来必要とする読者に届けられ、少なからず役に立っているとすれば、それだけで復刊事業継続の意味は果たされているといって良いかもしれません。今年は、オン・デマンドによる復刊も選択肢のひとつに加えました。店頭で見て購入というわけにはいきませんが、この方法の採用により復刊できる書目の数を大きく増やすことができました。共同でできる新しい試み、協力してくださるすべての方々とともに、この後もさらに挑戦していきたいと考えています。


 電子書籍元年から2年目、紙の本と電子書籍を二者択一としてとらえる時期は終わりました。電子書籍も知の蓄積を世界に拡げ、残していくための有効な手段と考えれば、それぞれの出版社は電子書籍化にも大きな可能性を感じています。学術書も同様です。それぞれの特徴を生かした共存は、今まで叶えられなかった経験を書き手や読み手に与えてくれます。手段の多様化は、新しい創作のモチベーションにもなりえます。内容の評価と、質の保証や維持という問題は、たずさわるそれぞれの専門の方々の必要性とともに、機能としての出版社や書店や図書館の役割をますます重要なものにしていくはずです。必然として起こった新しい変化の時代、書き手も読み手も、知の世界に積極的に関わることが可能になりました。「出版とはどんな営みか」「読書とはどういう行為か」「本とは何か」「著作者の権利とは」など、かつてであれば一部でしか話されなかった本質的な議論が、皆で話し合われるとともに、出版界だけでない方々との意見交換も活発に行われるようになりました。こうした議論の活性化こそが、もしかしたら電子書籍という新しいメディア登場の最大の収穫だったのかもしれません。


  変わるものと変わらないもの、次代につながる古典としての書物の存在と力を信じ、変化の時代のなかでの新しいこころみと努力を継続していきたいと考えています。


書物復権2011年8社共同復刊XV







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