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書物復権によせて

白井潤子

「本屋がすき」と「本がすき」とのあいだに、微妙な距離を感じるのは私だけではないはず、ではないでしょうか。
私自身、初めは「本を読むのがすき」が高じて本屋で働き始めましたが、そのうちに「本屋がすき」若しくは「本屋の雰囲気がすき」に変化しつつ現在に至ります。「本屋の雰囲気」といっても、本屋のある場所だったり品揃えだったり、いろいろです。個人的には、毎日本を触りたい、という願望が満たされれば……といったところです。
現在の書店に勤めて3年目になりました。今年の春頃でしょうか、見知らぬお客様に声を掛けられました。「そうだと思ったんだよ」と。「……?」ですよね。よくよく聞くと、以前勤めていた本屋のお客様でした(顔見知り、というほどではなかったです)。「棚の感じというか雰囲気が、以前の店に似てきたのでもしかして同じ人が作っているのではと考えていたら、見知った人が横切ったので声をかけた」と。棚作り、意識していないけれどもそんなもんなんでしょうか。

書店には1人で行きますか、それとも数人で? 土地柄もあるかもしれませんが、当店では女性は1人が多いです。男性は老若にかかわらず2~3人で来店してお目当ての本の前で語り合うパターン。買う買わないは置いといて、語り合うのがメインになっているのかもしれません。そういえば、こんなご意見がありました。「リクエスト復刊と謳っていながら毎回自分がリクエストする本が復刊されないのはどうしてなんだ」とご立腹でした。「選挙には行かなくても、必ずリクエスト投票しているのに」と。
「最近はOD版とか電子書籍とかいろんなカタチで本を読めるのはわかっているけれど、それはあまりにも個人的すぎるのでイヤだ!」との事でした。自分自身の欲しい(読みたい)ものが店頭に並んでいて、誰にでもその本を手に取って欲しいと。素晴らしい本に出合えた、という体験を共有したいんでしょうか。(本を前にして色々薀蓄を語り合うんだろうな、そして人文書は高いから図書館で借りたり。)でも、棚の前でお客様同士が話されている事って、こちらとしても参考になったりすることも多いので、棚整理をしながらそっと近づいてちょこっとだけ聞き耳たててたり。特に学生さんだったりすると、感性が予想外で。売れてる理由ってソコナノ、みたいな。
そういえば私自身も中学生の頃から下校途中には必ずといっていいほど友人と本屋に立ち寄っていました。しかも、その頃から本屋のハシゴも。買う本によってお店は替えていました。品揃えとか、カバーがすきとか、店員さんが優しいとか。
いまでは、パソコンでもスマートフォンでも本が読めるし、買えます。電子書籍なんて、本棚が必要ない本です。それはそれで便利だとしても書店に勤める身としては、やっぱりお気に入りの本屋を見つけて欲しいし、疑問に思ったことは何でも質問して欲しいものです。その会話からフェアのヒントをもらったりするので、ご来店をお待ちしております。

◇白井潤子 … 三省堂書店神保町本店

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