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書物復権によせて


◆ 書物復権によせて

川崎安子

「読書習慣があります!」と語る新入生に、どんな本を読んでいるのか尋ねると大半はライトノベルかベストセラー小説だ。読書時間がゼロという学生に比べれば幾分ましだが、大学図書館で扱う学術書となると学生による自発的な活用は皆無と言ってよい。課題レポートや論文を作成する段になって初めて専門書を手に取るわけで、読書習慣のない学生にとっては苦行以外の何ものでもないだろう。そして、「読めない」は「書けない」に直結する。この現実と向き合いながら、学生たちにアカデミック・スキルを身に着けさせるべく大学図書館員は日々奮闘している。
中央図書館を改修して五年が経ち、実に多様な常設展示の棚を作ってきた。メインゲートがある一階は、卒業生の作家作品やベストセラー小説、主要な文学賞作品など親しみやすい書架構成を心がけ、上層階になるほど学術書の色合いが強くなっていく。後代に読み継がれていくべき人文書を復刊するという書物復権の会の趣旨に大いに賛同し、学習図書閲覧室内に「書物復権」のコーナーを誕生させたのが三年前だ。表紙カバーを見せつつ、当該書を熱いメッセージPOPと一緒に並べると立ち所に借り手がつく。もしこれらがNDC配列のもと普通に背を並べて配架していたら? と思い立ち、コーナー設置前から所蔵していたタイトルについて貸出履歴の調査をしたところ、見事に学生の貸出者は存在しなかった。参考までに、「書物復権」各社の貸出トップは以下の通りである。(2019年2月末現在)

岩波書店 姜徳相 著『朝鮮人学徒出陣:もう一つのわだつみのこえ』(1997)
紀伊國屋書店 マーティン・ガードナー 著 / 上島建吉 訳『SFパズル』(1982)
勁草書房 坂井妙子 著『おとぎの国のモード:ファンタジーに見る服を着た動物たち』(2002)
青土社 ダニエル・プール 著 / 片岡信 訳『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたのだろう』(1997)
創元社 A.グッゲンビュール=クレイグ 著 / 樋口和彦 安溪真一 訳『心理療法の光と影:援助専門家の<力>』(1981)
東京大学出版会 大沢真理 著『イギリス社会政策史:救貧法と福祉国家』(1986)
白水社 鹿島茂著『職業別パリ風俗』(1999)
法政大学出版局 アルベール・メンミ 著 / 菊地昌実 白井成雄 訳『人種差別』(1996)
みすず書房 ジェームズ・ジョル 著 / 池田清 訳『第一次世界大戦の起原 改訂新版』(1997)
未來社 フランソワ・リヴィエール ガブリエル・ヴィトコップ 著 / 梁木靖弘 訳『グラン=ギニョル恐怖の劇場』(1989)
吉川弘文館 武田恒夫 著『狩野派絵画史』(1995)

すっかり気を良くし、昨年には出版社六社からの提案による世界のノンフィクション作品を集めた棚を増設した。新聞書評欄に掲載された本のコーナーは、補充を毎日しなければならないほど利用されている。美術書出版会十社との「美術書フェア」は当初、短期間での展示を予定していたが、あまりの人気ぶりに常設になるなど枚挙に暇がない。おかげで本学における貸出率は前年比一割増を毎年達成し続けている。出版社の方々の助力なしには考えられない結果だ。今後も相思相愛で協働し、活字に強い学生の育成に尽力できればと強く願う。



◇川崎安子 … 武庫川女子大学附属図書館図書課長/司書課程講師



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