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著者 | ヴァルター・リーツラー (筧潤二訳) |
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出版社 | 音楽之友社 |
ジャンル | エンタメ |
ISBNコード | 9784276223059 |
登録日 | 2007/09/27 |
リクエストNo. | 39904 |
リクエスト内容
楽聖ベートーヴェンの研究書は古くからありますが、それは作品そのものについての総論的研究と、ベートーヴェンの伝記とに大きく二分されます。ベートーヴェンの伝記的研究は、例えばメイナード・ソロモンの活躍など、近年も頻繁に行われています。しかし、作品についての総論的解説は現在殆ど見られなくなってしまっています。
このリーツラーによる本は、有名なロマン・ロラン、ベッカーらの本と並び、ベートーヴェンの一般向けに書かれた総論的研究の金字塔として大変価値の高いものです。その証拠に、多くのベートーヴェン研究に参考文献として顔を出していますし、ヨーロッパではベートーヴェン研究の決定版のように扱われていた事もあります。
リーツラー研究の特徴としては、ロマン・ロランの「英雄的」で時に感情に流されがちな記述とは異なり、精緻・明晰な分析を重ねた結果の、冷静で理知的なベートーヴェン像を浮かび上がらせている点です。
また、リーツラーは音楽理論家のシェンカーや大指揮者フルトヴェングラーと近い位置にいた研究家で、この本からはシェンカーの仕事についても知ることができますし、フルトヴェングラーが序文を寄せています。
本書の前半の内容はベートーヴェンの一生をまとめたものですが、ベートーヴェン死後に作られた数々の「ベートーヴェン伝説」から、実際の人間ベートーヴェンを区別するのに非常に気を遣っていて、丁寧な論証の仕方です。
後半の内容は各作品についての詳細な解説ですが、主観をできるだけ廃し、またほかの研究者による膨大な研究を引用しつつの解説で、好感が持てます。
本書を通じてリーツラーは、世に蔓延する「ベートーヴェンの苦しい経済生活や恋愛状況を作品解釈と結びつける」考察を徹底的に嫌っています。ベートーヴェンのような魅力的な人物だと、ついついその作品を「文学的」に解釈したくなりますが、それを排除した点こそ、この本が数多あるベートーヴェン研究書のなかで、一種独特で知的な雰囲気をもつ理由だと思われます。
投票コメント
全3件
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私は幸いにして父から譲られた蔵書としてこの本を持っていますが、GOOD!1
漢字表記や文体などがやはり昔風で、
21世紀の現代ではちょっと読みにくいのが難です。
めでたく復刊の際にはぜひそういう点を現代に対応した形に修正して欲しいと思います。
内容は決して古くなってはいません。
古今東西、玉石混合、
星の数ほど出版されてきた『ベトベン本』の中で、
オーセンティックで冷静な、かつ『読ませる面白さ』も備えた、
今なお読むに値する優れた伝記作品です。
ぜひできるだけ多くの人が気軽に入手可能になり、
ソロモンやセイヤーやロランの作品などと読み比べることが出来るようになってほしいです。 (2008/09/23) -
ロマン・ロランやベッカーのベートーヴェン作品解説や、セイヤーによる伝記と並び、一般向けのベートーヴェン研究書としては最も有名な本の1つです。GOOD!1
リーツラーの記述の特色はロランやベッカーのものとは一線を画し、著者の主観、ベートーヴェンについての(真偽不明の)エピソード、ベートーヴェンの生活や恋愛を彼の作品と結びつける考察等の、客観的なベートーヴェン像を濁らせる要素を丁寧に排除している事です。この特長により、本書は数多のベートーヴェン研究書の中でも、一種独特な冷静で理知的な光を放っています。
多くのベートーヴェンについての記述で参考文献として顔を出すなど、未だに極めて高い価値を持つ本ですが、廃刊となって久しく、また、古書としても殆ど流通していないのが現状です。定番は万人が入手可能である事が好ましいと存じます。 (2007/09/27) -
ベートーヴェンについて知りたいと思ったとき、この本が有名だと聞いたので。 (2009/01/17)GOOD!0
読後レビュー
NEWS
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2007/09/27
『ベートーヴェン』(ヴァルター・リーツラー (筧潤二訳))の復刊リクエスト受付を開始しました。
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taretare38