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奇妙な果実

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「ラジオ・スターの悲劇」後の80s後半、多くの深夜テレビがその特性を生かし、専門化=多様化し始めた教養=共用”主義=趣味”的な各ジャンルの”初心者・入門者”向けコンテンツの役割を担った。『タモリ倶楽部』で顔の売れた音羽系の偏執=編集者・山田五郎が地歩を固めた、本書と同名の人気コーナーもその例に漏れず、ゼネラリスト然と彼が手際よく”迷える子羊”を教導した。だが、メイン/カウンターやオリジナル/コピー等の区別=対向の無効化を試みる一定の(同時代的、横断的=博物学的)文化=分化を前提とした、パロディやオマージュの羅列的引用を享受=教授し得る”現代思想”系や”オタク”層への訴求要素が多く、その受容=需要はあまり伸びなかった(刊行部数も抑制された)。ジングルに仏映画『デリカテッセン』主題歌を採る同コーナーの主調は、米国の人種差別を告発した30sのジャズ「奇妙な果実」以後のモダンでリアリスティックな、切実な悲壮感とは無縁で、その対極に位する。90s前半に特有な、ポストモダンの文脈で捉え直されたシュールレアリスムに親しい、刹那的で軽妙な明るさに一貫して支えられた表象批評的ポップカルチャーを体現した。

2025/06/28