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色・歴史・風土 : 美術化学私論

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美術品を修理・保存するための事業は古くから行われており、その学問は文化財科学、保存科学などといった呼称で一般化しつつあるが、その詳細を解説した本は少ない。そしてそれらは専門的な記述に偏っており、ごく一部を扱っているだけである。それだけでなく資料をなぜ保存するのか、どのように修理すべきなのかを論理的に議論した本は見当たらず、こうした本の欠落が無思考的な修理や保存を行わせる契機になっていると言える。現在は様々な理由から美術品が破壊されたり、経時的な変化によって損傷しており、そうした事が社会的にも注目を浴びている。そして保存事業に携わることを志望する者も多くなっている昨今においては、修復・保存に関して、科学的・哲学的に執筆された本が不可欠である。本書は1986年の出版と同時に好評をもって迎えられたが、発売元の六興出版(出版は瑠璃書房)の倒産(?)により絶版となっている。現在においては科学的な記述に関しては多少の古さが見られるが、保存に関する哲学的な記述に関しては未だ色褪せない内容となっている。この本はこれから美術品や文化財の保存や修復に携わる人間にとっては必読の書であり、今回復刊を希望した。

2003/06/23