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カント全集 10 たんなる理性の限界内の宗教 <岩波オンデマンドブックス>

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第四批判

本作は“批判(Kritik)”という言葉こそ入っていませんが批判精神に貫かれています。一部の学者は「第四批判」と呼びます。とくに序文の草稿を読むとなぜ「たんなる理性の宗教」ではなく「たんなる理性の“限界内の”宗教」なのか理解できます。
さて本作の序文でカントは「道徳を守る上で人間以上の存在者を必要としない」と書いています。いわゆる無神論・無宗教と呼ばれる人でも道徳的・自律的な人間はいるわけです。そして悪は善の欠如ともいえます。カント自身、信条・心情的に断定は避けていますが、おそらく本作の出版がなかなか許可されなかったのも、この点が絡んでいるのでしょう。
序文の中に「道徳は宗教にいたる」と述べていますが、これは学問的誠実さの表れであり、彼自身の思索過程そのものといっていいでしょう。彼の問いに対しフィヒテ、シェリング、ヘーゲルといった観念論者が答えていきますが、それはまた別のお話。

2022/02/26