その男が教室にやってきて中一の生徒と一緒に授業を受け始めたのは、三学期の始業の翌日からだった。その後の三週間で学年の六クラスを移動しながら授業を真面目に受け続けた。そして、新二年の始業式に男は紹介され、三組の生徒と男＝担任小山との新しい出会いが始まる。

数学の授業を通して、勉強の動機づけや各人の学力の確認をし、学力に応じた課題を与え、理にかなった学習方法を一々納得させながら具体的に教えていく。英語や国語についても同様である。更に担任小山は社会や人生についても自らの強烈な体験を基にした感動的な話をしながら生徒を魅了していく。

この強烈な個性に触れた読者もまた、これまでの学習方法や勉強の意義について整理と確認をし、これからの生活について見通しと自信を、そして生きることに夢と勇気を必ず持つことだろう。だが、最後の劇的な出来事に直面しても微動だにしない勇気と夢であるだろうか。