西洋の歴史的な絵画技法について、自身も巨匠と呼ばれる現代の画家であり、また優れた美術史研究者としても知られる著者・ホックニーが解説した本。
本書は「秘密の知識」というタイトルの通り、西洋絵画の制作に用いられてきたものの現在では失われてしまったある種の「知識」について解き明かしている。西洋画家のビッグネームたちが明かすことなく暗に用いていた（あるいは歴史的に失われた）技術について、描かれた絵の分析から類推し、「○○」を使っていたと考えるのが自然である、というかたちの論理を用いて事実の推理を進めていく。その技術は、現在でいうところの「○○○」に用いられているものである……というと、好奇心をくすぐられるのではないだろうか。
本書は絵画の歴史についての本であると同時に、人間の視覚に関わる知識（社会）論でもあり、示唆は他分野に及ぶものだ。入手困難であることが非常に惜しまれる貴重書であり、また全世界で売れ続けているベストセラーでもある。ぜひとも復刊をお願いしたい。