この「裸婦の中の裸婦」で、架空の対話者たちは、旧来の美術史にとらわれず、ときには現代人の心理分析、文明批評などをまじえつつ、気ままに気楽に作品を鑑賞している。遊び半分でいながら何か本質的なことに届いているような精妙な語り口に、晩年の澁澤龍彦の円熟ぶりが見えるといってもいいだろう（巖谷國士）

登録者の評価★★★★★★★★☆☆

澁澤龍彦と美術評論家の巖谷國士との架空の対話体によって、古今の裸婦美術を語る。澁澤の入院によって、後半は巖谷単独の執筆になった。
なお、本リクエストは図版がオールカラーであった文春文庫の復刊を希望しています。現在、河出書房新社からも文庫化されていますが、図版がほとんどモノクロになってしまっています。

【目次】

1.幼虫としての女－スカーフを持つ裸婦（バルテュス）

2.エレガントな女－ウェヌスとアモル（クラナッハ）

3.臈たけた女－愛と時のアレゴリー（ブロンツィーノ）

4.水浴する女－女と海（ヴァロットン）

5.うしろ向きの女－鏡を見るウェヌス（ベラスケス）

6.痩せっぽちの女－裸婦（百武兼行）

7.ロココの女－パリスの審判（ワトー）

8.デカダンな女－裸婦（ヘルムート・ニュートン）

9.両性具有の女－眠るヘロマフロディトス

10.夢のなかの女－民衆の声（デルヴォー）

11.美少年としての女－少女の人形（四谷シモン）

12.さまざまな女たち－トルコ風呂（アングル）