アンティックの蒐集に関しては、常に心して、「ババ」をつかむことを避けるべきなのである。トランプのババ抜きはどんなに用心していても、運命のなりゆきで、誰かがババをつかんでゲームの終了をむかえるわけだが、アンティックのババぬきゲームにおいては、株式や商品市場の取引の場合と同じで、常に「おそくきたひと」がババをつかまされることになるのが原則であることを忘れてはならない。（まえがきより）

「萬物蒐集」を趣味とされていた作家の梅田晴夫氏が書いたアンティック入門書。今日ではアンティックを取り巻く状況も以前と変わってしまったが、時流に乗って安易に飛びつくのではなく、あくまでもアンティックを実用的に愉しむことを薦めた本書の価値は、蒐集の本質を突いた点において不変である。蒐集仲間との座談会も愉快な内容。新書判206頁で1973年5月出版。定価は480円。

登録者の評価★★★★★★★☆☆☆

【目次】

まえがき

第一部　投資としてのアンティック入門
真贋について　利殖について　自分で楽しむ　興味のあるものを蒐める　仲間をまきぞえにする　アンティック蒐集の歴史

第二部　これがアンティックだ！

■アンティックとはなにか？
人間の「手の歴史」の証拠　「日常役立つ」が条件　菊花紋のケース　古物メガネ　50年前のアイディア腕時計　「占領照明」つきカメラ　60年前の万年筆　帰ってきた三つ揃い　にぶく光る銀製ダンヒル　時計のカギの首飾り　マッチボックス　蒐集を豊かにするコツ　コーチ屋　なにがアンティックになるか　珍品の見つけ方ほか　

■アンティックさまざま
柱時計　エッグカッター　櫛　刀剣　パイプ　エンタイア　パイプのカタログ　クラシックカメラ　金庫　SPレコード　煙草捲き上げ器　十万歩計　蓄音機　ガラス　珍酒の収集　ライター　ピアノ型のオルゴール　目ざましつき懐中時計　古道具　文鎮　レコード　名士の名刺ほか

■アンティックの世界
蒐集・趣味の歴史と狂気

■座談会＜蒐める＞－蒐め魔放談録
高橋邦太郎（仏文学者）
磯部敬恒（元東京いすゞ本社管理部次長）
赤羽勲（アンティーク・ショップ古典屋店主）
前田右府郎（某官庁最下級職員）
井上篤夫（元プレーボーイ誌取材記者）
梅田晴夫（司会）

■ニセものでも儲かる