能は世界で最も古い演劇であると同時に、前衛芸術としての評価が高い。能面を中心として、能装束の意匠も、小宇宙を実現する能舞台の空間も、メカニックなその芸態と人間の情念を凝結するドラマそのものも、なにゆえかくも現代に斬新なのだろうか。

日本の美のひとつの極限の秘密を、その独創的なデザイン発想から探った卓抜な能面論である。豊富な写真は佐藤明氏と著者をはじめ、北沢三次郎、美谷島醇氏が手がけている。平凡社カラー新書55として1976年出版。143頁、価格は550円。

登録者の評価★★★★★★★★★★

【目次】

◇カラー版8頁：幻想の美

■デザインの原点
世阿弥と能面　世界の仮面の中で

◇カラー版16頁：能面の世界～能面打ち

■能面‐その主張
能面の果たすもの　能面の顔　ヘアスタイルと能面　能面を打つ

◇カラー版32頁：装束と舞台の意匠
変身のプロセス　能の扮装　鱗模様の主張　扮装による演出の違い　舞台上の人物デザイン　作り物のさまざま

■舞台の造型
独創的な装束のデザイン　扇と白足袋の美学　作り物と能の演出

◇カラー版8頁：小さな宇宙～能舞台

■演技と舞台空間
球体の演技　立方の空間　小さな宇宙