東京は日本を代表する城下町である。その規模といい、町並の美しさといい、同時代の世界の都市に比べて冠絶していた。ここは徳川700万石の大城下、中心は将軍の君臨する江戸城。そして山手と呼ばれる台地に大名・旗本屋敷が並ぶ。大川の流れる庶民の町、下町に対し、濠に囲まれた武士の世界があった。町割に祭に武士の暮しの名残がある。

時代小説家、池波正太郎氏が、江戸の古地図と今日の東京を照合し、現代においてもかすかに見られる江戸の風俗の名残を拾い上げ、その魅力を語る。貴重な江戸時代の古地図を収載、カラー写真は富山治夫氏、挿絵は池波氏とは縁が深い中一弥氏が担当している。江戸情緒の香りが漂う一冊。平凡社カラー新書24として1975年出版。143頁、定価は550円。

現在はコロナ・ブックスとして、本書に先だって刊行された「回想の下町」との合本で出版されているが、テキスト・写真・挿絵が割愛されており、貧弱な体裁となっているのが惜しまれる。元の版での復刊を願う。

登録者の評価★★★★★★★★★★

【目次】

◇カラー版8頁：大江戸の名残り

■石垣と濠と

■江戸古地図散歩１－九段から桜田門へ

◇カラー版16頁：江戸城周辺

■江戸古地図散歩２－夜の東京に江戸がある　上野の山

◇カラー版24頁：上野　神田

■江戸古地図散歩３－彰義隊　山の手

◇カラー版16頁：江戸郊外

■江戸古地図散歩４－日本橋　銀座　丸の内

■江戸・町と暮し案内（川崎房五郎）