洛中は高層化が進んだが、その無機的背景の裏に古社寺の潜まりは由々しく、人々の情操が守り伝えてきた事跡も決して乏しくはない。洛東・洛北・洛西・洛南の散策に拾った風光を胸に、古い条坊の規矩を留めた裏通りを行くと、二重写しに歴史の気色が甦る。この感懐が常に美しいのは、京都はやはり千年の古都だからであろうか。

観光地化した表の京都ではなく、裏道にみる京都の真の美を味わう京都探訪シリーズの掉尾を飾る第5巻。井上博道氏撮影による多数のカラー写真も美しい。初版刊行から30年を経て、現在では様変わりしてしまった景観もあり、資料的価値も高い。平凡社カラー新書95として1978年出版。史麻雅子さんによる絵地図入り、143頁。価格は550円。

登録者の評価★★★★★★★★★★

【目次】

◇カラー版16頁：新熊野から祇園へ

■流転の道
新熊野神社　法住寺法華堂陵　養源院　三十三間堂　豊国神社　耳塚　六波羅蜜寺　建仁寺　祇園

◇カラー版8頁：先斗町から錦小路を抜けて

■石畳の道
高瀬川一之船入　三条小橋　瑞泉寺　先斗町　染殿院　錦天神　錦小路　六角堂頂法寺

◇カラー版16頁：寺町通りを北へ

■青草の道
矢田寺　革堂行願寺　下御霊神社　仙洞御所　梨木神社　廬山寺　清浄華院　猿ヶ辻　相国寺　上御霊神社

◇カラー版8頁：上京の寺々

■瓦礫の道
木槿地蔵　擁翆園　妙覚寺　本法寺　妙顕寺　宝鏡寺　報恩寺　白峰神宮

◇カラー版8頁：神泉苑界隈

■水の道
六角獄舎趾　武信稲荷　二条陣屋　神泉苑　二条城

◇カラー版8頁：東西本願寺を巡る

■安養の道
島原　西本願寺　東本願寺　渉成園