阿片は、刑法第140条により、吸引等を堅く禁じられている。ところが戦前の日本では、阿片を医薬用以外に、即ち中国に売りつけるために（専売制度を活用して）罌粟栽培を奨励していた。邦人の阿片吸引が害毒以外の何物でもないとして厳禁していながら、一方で大陸進出の足掛かりとして、麻薬の代表である阿片を利用していたと云うのであれば、それは恐るべき事である。中国に輸出する阿片は、市場経済の中で競争し勝ち抜く（消費者？から選んで貰える）高品質の商品？として、高レベルを維持する事が大切であったが、その為にも、政府自らが阿片の精製純度等を検査し、常に粗悪品の発生に目を光らせ、モルヒネを多く含む良い品質の製品は、更に良くなる様にと、厳しい指導を怠らなかった。罌粟農家と阿片製造業者と阿片商人と政府が一丸となって、高いモルヒネを含有する阿片を作る様は、実に興味深い。そういった、罌粟栽培・阿片製造の統計とモルヒネ含有率の試験結果内容は、毎年一回、内務省衛生試験所から「阿片成績」と云う、小冊子（非売品）に纏められ、関係者の参考に資する為に、頒布されていた。現下では、全く考えられない事であるが、こういった政府自らの公文書的な阿片資料は、その事実を黙殺したい現在の日本政府からは、完全に否定され、国会図書館には、一冊（昭和3年版）しか存在しない様である。研究者の為にも、禁断の資料の復刊を望むものです。もし宜しければ、当方の他のリクエストも是非御高覧ください。（戦前史料多数登録中）　※　古書店での入手難易度　★★★★★