レビュー一覧

かなしき女王―ケルト幻想作品集

全1件

残酷だが妖艶なスコティッシュ・ケルトと、大正の幽玄な日本語訳が渾然一体となった世界。

【収録内容】
『海豹』
『女王スカァアの笑い』
『最後の晩餐』
『髪あかきダフウト』
『魚と蠅の祝日』
『漁師』
『精』
『約束』
『琴』
『浅瀬に洗う女』
『剣のうた』
『かなしき女王』
戯曲『ウスナの家』
解題『アイルランド文学翻訳家 松村みね子』 井村君江
松村みね子翻訳年譜一覧 井村君江・編
解説『ケルトの幽冥』 荻原規子

現代ファンタジーのようなエンタメ性は無いので、人によっては面白くないと思いますが、スコティッシュ・ケルトの宗教観が伝わってきます。Amazon.co.jpで『キリスト教とケルト伝説の素敵なマリアージュ』というレビューで、「一言で言うとキリスト教とケルト伝説の美しい融合だろう。前者に傾倒していることを思わせるようであり、後者の方もしっかり堪能できる。それも全く無理がない。」と書かれていましたが、同感です。破滅的な話が多いと感じました。
松村みね子氏の訳は、古風で読み辛いですが、現代的な訳では良さは伝わらないでしょうね。文章表現はとてつもなく美しい。フィオナ・マクラウド氏の残酷だが妖艶なスコティッシュ・ケルトと、松村みね子氏の大正の幽玄な日本語訳が渾然一体となった世界に連れて行かれそうです。

井村君江氏の解題は、フィオナ・マクラウド氏の事だけじゃなくて、松村みね子氏の事も知りたかったので、松村氏に関する事柄が沢山書かれていてとても勉強になりましたし、明治~昭和初期の文壇の息吹が感じられる名解説でした。
荻原規子氏の解説も秀逸。

2015/09/01