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大乗仏典 15 世親論集

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まず識より始めよ

龍樹をはじめとする中観派が言語(既成概念)の解体を通して執着からの解放(覚り)を目指したとするならば、世親たち瑜伽行唯識派は覚りや修行段階の言語化を目指したといえるでしょう。
彼らが取った手法は唯識すなわち「物事を認識している私はとりえず存在する」と認めることでした。それはデカルトの「コギト(我考える)」やフッサールの「判断中止(エポケー)」に通じる部分があります。
さて本書には世親による他派への反論である『唯識二十論』、『唯識三十頌』のスティマティ(安慧)の注釈『唯識三十論(釈)』、『三性論』と訳者・長尾氏の注釈と唯識の代表的な論書が収録されています。とくに中観と唯識の止揚を目指した『中辺分別論』が重要です。
講談社学術文庫『世親』と合せて読むことで唯識への理解が深まるはずです。

2024/07/27