年間数百万人もの参詣者が訪れる日本有数の大寺院、長野の善光寺は、古来より宗派も男女も問わない広い信者を集めるきわめて独特な寺である。その信仰の謎の解明を通じて、日本人の宗教感情の本質にせまる。

生き物にかならず訪れる死。それは他の動物に食をあたえ、たとえば鳥の巣作りの貴重な材料となり、やがて静かに大地へ帰る。伊那谷の自然に輪廻転生を見る伝説の写真集。

現代スペインの象徴とされる闘牛士エル・コルドベス。内戦下の貧村に生まれた彼が無の境遇から意志の力で這い上がり全国民を興奮の渦に巻き込む正闘牛士となるまで壮絶な半生を描く。巻末エッセイ佐伯泰英

唐代は楷書の完成期、または爛熟期として極致を究めた。古くから規範として仰がれる唐代碑法帖はもとより、詩詞、写経など肉筆資料からも幅広く選字して見出し字5800字、計46000字を厳選収録。

明治日本が近代化を達成しえた要因を近世人の生活にさぐる試み。健康・衛生などの生活水準の諸問題、あるいは衣食住の状況を外国との比較で論じる独特な生活文化論。

日本の中国侵略が進むなかで行なわれた文学論争関係の文章など、政治変革期における文学者像を明確に示す、魯迅晩年の評論を収める。

日本の中国侵略が拡大していく時期、多数の筆名と「奴隷の文章」を余儀なくされながら、なお屈せずに書き続けられた時局批評のアンソロジー。

北京を脱出し上海に定住した時期の評論。革命の根拠地での「革命」についての省察と状況論は、「寸鉄よく人を殺し、一刀血を見る」と評された。

『新青年』誌の「随感録」欄に発表された短文、 民国以来のもっとも暗黒なる日に書かれた「花なきバラ」など、北京時代の評論を収める。

散文詩的な作品『野草』、自伝的回想の連作『朝花夕拾』、神話・伝説・古代史に取材した『故事新編』の三作品集を収める。

『江戸名所図会』を読み、歩くための必携手引書。人名・地名索引、現代東京名所案内により参照機能を拡充、さらに『東京名勝図会』も併録する。

『江戸名所図会』刊行とほぼ時を同じくして流布した切絵図（分割地図）三十二枚を編集、幕末からいまに残る名所古蹟を訪ねる便に供する。

斎藤月岑の健筆も、隅田川の東岸地域へとおよぶ。江東区、墨田区、葛飾区、江戸川区、さらには千葉県下を収録。

文京区から北区、埼玉県下を記述した巻之五、および上野、浅草の賑わいを中心に、台東区、荒川区、足立区を採録した巻之六を合本で収める。

江戸の北辺、新宿、豊島、中野、杉並、練馬、板橋から都下、さらには大宮にまで至る広大な地域の名所古跡、神社仏閣などを記述した一巻。

斎藤月岑の博捜と長谷川雪旦の画業もいよいよ佳境に。江戸の郊外、新宿・渋谷・中野・杉並・目黒・世田谷、さらには広大な都下まで筆を及ぼす。

江戸城を中心に築かれた武家地と、商業地・下町の賑わい、四通八達した街道沿線の姿が髣髴とする。千代田区・中央区・港区、江戸への旅がいま始まる。

写真機は男の欲望をレンズに映し、女の裸体像に時代を刻印してきた。ジャポネスクの芳香ただよう幕末・明治からエロ文化大爆発の戦後まで、歴史の背後に隠されたエロ写真の全貌を発掘した性風俗写真史の傑作。

芸術家のミューズ、悩める者のシャーマン、魂を揺さぶる歌手、現代の美的貧困を嘆く文筆家。その強烈にして異質な輝きがようやく受け入れられるようになったいま、独特の世界と生き方を多角的に照らし出す。