榛名ちひろさんのページ
レビュー
-
楽譜の歴史
見て楽しい楽譜の本
西洋音楽の歴史において、楽譜は非常に大きな役割を果たしてきた。それは単なる記憶のための手段というだけではなく、20世紀には音楽を生み出す場にさえなったのである。
本書は、楽譜というものが旋律の上下の動きを示すネウマから始まり、次第に音程関係や音高を明確にし、リズムも示すようになっていくまでの変遷、またリュートや鍵盤楽器の奏法譜(タブラチュア)がどのようなものであったのを豊富な写真で示している。それらは美術品として眺めても美しいし、音という消えてしまうものをなんとか書きとめようとした往時の人々の工夫が偲ばれて、まるで音まで聞こえてくるように感じられる。。
近代記譜法―鍵盤楽器のための記譜法がこのようになったことが示されるのであるが―となった後の例としてバッハやR.シュトラウスや山田耕筰ほかの自筆楽譜が載せてあり、これまたそれぞれの作曲家の個性が表われていて非常に楽しい。現代楽譜の例はただ近藤譲氏のものがあるのみであるが、それまでの記譜法との乖離が見られて知らなかった世界を覗く面白さがある。
このような「見て楽しい」本書は、音楽好きならば是非側に置いておきたい一冊である。(2012/07/26)
復刊リクエスト投票
クララ・シューマン ブラームス 友情の書簡
【著者】原田光子訳
楽譜の歴史
【著者】皆川達夫