インディーさんのページ
レビュー
-
青銅の弓
本当の敵は自分自身を縛る憎しみの心。憎しみから赦しへ。魂の遍歴の物語り!
1962年度ニューベリー賞(後述)受賞!
【著者】E.G.スピア
【出版社・年】岩波書店 1962年
【カテゴリー】児童書 小学校高学年から
【現状】1986年に第3版を最後に休刊(事実上の絶版)。蔵書している図書館(公共・大学供)も少なくなりました。出回っている古書もわずかの超希少本です。
アメリカでは今でも再販を重ね、学校教科書にも採用されているとのことです。日本とは雲泥の差です。
▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫
前置きが長くなりました。
イエス・キリストの時代。 ユダヤのガリラヤ地方。
ローマ帝国の圧政に苦しむ人々。青年ダニエルも少年期に両親をローマに殺されました。ローマへの復讐を誓い、家族を捨て、夢を捨てて、ゲリラ活動に身を投じます。しかしそのゲリラ活動もローマと戦うどころか、同胞を襲っては金品、食料を奪う山賊そのものでした。
▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫
悩みを深める中、イエスとの出会いがあります。一目でイエスこそローマからの解放者だと確信し、ダニエルはイエスに近づいていきます。
ダニエル「先生、我々の指導者になってください!」
イエス(静かに迫り)「全てを捨てて、わたしに従ってほしい」
ダニエル「家族も生活も全て捨てました、残っているのはローマへの復讐だけです!」
イエス「その憎しみも捨てられますか?」
ダニエル「それだけはできません!」
困惑と失意の中、イエスの元を去るダニエル。
あがくほど、もがくほど遠のいていく、本当の解放。
▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫立ちはだかるローマ。仲間が命を落とし、友も去っていき、最愛の妹も死の縁の中、自分を責め続けるダニエル。絶望の底で、ダニエルは最後に何を見いだすのでしょうか?
コロナという人類共通の敵と連帯して戦い、疲弊する私たち。それでもなお他者への憎しみを捨てきれない私たち。今こそ若い人から大人まで、全ての人に読んでほしい作品です。
▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫
ニューベリー賞はアメリカの最も権威ある児童文学賞です。文字数が少なくなってしまいましたので、詳しくはウィキペディア等をご参照ください。(2021/05/18)
復刊リクエスト投票
青銅の弓
【著者】エリザベス・ジョージ・スピア