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  • その男ゾルバ

    【著者】ニコス・カザンザキス

    カミュの『異邦人』もドストエフスキーの『悪霊』もカフカの『城』も再版を繰り返すなか、なぜ『その男ゾルバ』は絶版の憂き目をみなければならないのか。

    そこには『異邦人』と同じように、すべてがある。生と死、肉体と精神、自然と人間、労働者とインテリ、周縁と中心、空間と時間。カザンザキスの溢れ出す言葉はその世界を見事に彫りだしている。その言葉のひとつひとつはみずみずしく、そして鋭い。また、『悪霊』と同じように、読者を文学の胎内へと導く、あの昇華を遂げている。細部は融和し、無数の葛藤は和解し、ひとつの充足した物語として私たちの前にひらかれている。それはひとつの世界そのものだ。そんな作品を人は「名作」と呼ぶのではなかったか?
    そう、あの『城』と同じように、『その男ゾルバ』は永遠に読み継がれるべき「名作」なのだ。

    私たちはこの遺産を失ってはならない!(2004/09/01)

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