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  • 原子野の『ヨブ記』―かつて核戦争があった

    【著者】伊藤 明彦

    「天皇の戦争責任」発言で右翼によって狙撃された元長崎市長の本島等氏は,「私が今日まで読んだ『被爆体験』のなかで最も感激した」と本書を激賞しているが(『本島等の思想』154ページ),筆者も同感。通常,被爆体験記は,誤解をおそれずにいえば,つまらない。どれもおなじようなものだ,という点で。しかし本書はおもしろい。それはこの本が被爆者たちの体験をもとにしているが,単なる体験記ではないから。つまり著者・伊藤明彦は,個々の原水爆被爆体験を歴史の全体像のなかでとらえようとするなかで,被爆者もまたおおかれすくなかれ戦争の加害者ではないのか?という問いをもって被爆者にインタビューした点がユニーク。その結果,そのインタビューのエッセンスと著者のするどい洞察をおさめた本書は,人間の本質をつくような,つまりラディカルな作品となった。彼の調査の量が,この本のすぐれた質をうんだというべきか。
    図書館でかりてよんだけど,「これは,かって,もっておく価値あり!」とおもった。(ついでに,復刊するなら,文庫にするなり,もうちょっと手ごろな価格にしてもらえんかね。[本体4200円プラス消費税,1993年当時])(2014/05/29)

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