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「それでは、埒が明きはしないぞ。数えたところから、忘れることが肝要だ。踏まえるだけで、後へ棄てるんだ。その時その時の持続の情、それだけが現実だ。前も後ろもその中にふくまれる。前方の聖堂へ向かって歩く時、持続に揺るぎがなければ、背後の法院はなくなるものか。かりに、歩く跡から地面が陥没して、踵が深淵を踏むとしても、知らなければ、知ったことか。そうして広場をおおよそひとめぐりすれば、いや端から端までしっかりと渡っただけでも、数えあげたことになる。少々数え落そうが、重ねて数えようが、全体として大した狂いもない。あらためてつくづく見渡したら、広場がなくなっていた、荒涼とひらいた穴と化していた、とそんなことも、そう見れば、ないでななかろうが。それでも、今日は無事だったと、あてにもならぬ目はつぶって寝床にひきあげればよろしい。朝起きて見れば、たいてい何もかもが良くなっている。偏執に着けば、虫の這いこんだ隙間ひとつ、無限になるぞ。好んで噪いでいるのなら、口をはさむまでもないが。だいたい、すべてが数えあげられた日には…。」(本文より)
2001/10/08
「それでは、埒が明きはしないぞ。数えたところから、忘れることが肝要だ。踏まえるだけで、後へ棄てるんだ。その時その時の持続の情、それだけが現実だ。前も後ろもその中にふくまれる。前方の聖堂へ向かって歩く時、持続に揺るぎがなければ、背後の法院はなくなるものか。かりに、歩く跡から地面が陥没して、踵が深淵を踏むとしても、知らなければ、知ったことか。そうして広場をおおよそひとめぐりすれば、いや端から端までしっかりと渡っただけでも、数えあげたことになる。少々数え落そうが、重ねて数えようが、全体として大した狂いもない。あらためてつくづく見渡したら、広場がなくなっていた、荒涼とひらいた穴と化していた、とそんなことも、そう見れば、ないでななかろうが。それでも、今日は無事だったと、あてにもならぬ目はつぶって寝床にひきあげればよろしい。朝起きて見れば、たいてい何もかもが良くなっている。偏執に着けば、虫の這いこんだ隙間ひとつ、無限になるぞ。好んで噪いでいるのなら、口をはさむまでもないが。だいたい、すべてが数えあげられた日には…。」(本文より)
2001/10/08