レビュー一覧
新装版 私説三国志 天の華・地の風 全10巻
全1件
三国志ファンの方々からも、JUNE(BL)ファンの方々からも高い評価の声を聞くものの、古い小説なのではたして手に入るのだろうか…と不安に思いながら検索したところ、復刊ドットコムさんで復刊されているのを知り、全巻購入しました。
購入してよかったです。前評判通り、いえ、それ以上でしょうか。
江森先生の描く世界にただただ圧倒されました。人々の息づかい、愛憎に塗れた人間関係、泥臭い情報戦に権力闘争の駆け引き。巻を進めるに従って凄絶さを増す物語に、ページを捲る手が止まりませんでした。
三国志のよくある人物造形を念頭におくと、ほとんどのキャラクターに裏切られます。演義よりも正史よりの解釈なのをさしひいても、善良で清い人物はほとんどいません。まあ、主人公の諸葛孔明の設定からして当然かもしれませんが…。
完璧な英雄の仮面から引き剥がされたキャラクターたちは、悩み惑い、悪行も為すただの人ですが、しかしそうしてままならない戦乱の時代を足掻く姿には、神話じみた姿にはない、普遍的な魅力があります。
陰惨で美しいラストのカタルシスに呆然としたあとに、地獄篇とでもいうべき「死者たちの昏き迷宮」、そして最後に一種の清涼剤のようなすべての始まりの話「桃笑始」で、ようやく現実に戻ってくることができました。
政治劇であり、同時にラブロマンスでもある。その両方を、これだけ高い水準で両立させている小説は、ほとんどないのではないでしょうか。同好の方には、ぜひともおすすめしたいです。
小林先生の表紙の分、前回の復刊よりもお値段が少々高くなっていますが、それだけの価値は充分あると思います(光風社の出版当時の扉絵、挿絵等は残念ながらありません…念の為)
2020/05/19
三国志ファンの方々からも、JUNE(BL)ファンの方々からも高い評価の声を聞くものの、古い小説なのではたして手に入るのだろうか…と不安に思いながら検索したところ、復刊ドットコムさんで復刊されているのを知り、全巻購入しました。
購入してよかったです。前評判通り、いえ、それ以上でしょうか。
江森先生の描く世界にただただ圧倒されました。人々の息づかい、愛憎に塗れた人間関係、泥臭い情報戦に権力闘争の駆け引き。巻を進めるに従って凄絶さを増す物語に、ページを捲る手が止まりませんでした。
三国志のよくある人物造形を念頭におくと、ほとんどのキャラクターに裏切られます。演義よりも正史よりの解釈なのをさしひいても、善良で清い人物はほとんどいません。まあ、主人公の諸葛孔明の設定からして当然かもしれませんが…。
完璧な英雄の仮面から引き剥がされたキャラクターたちは、悩み惑い、悪行も為すただの人ですが、しかしそうしてままならない戦乱の時代を足掻く姿には、神話じみた姿にはない、普遍的な魅力があります。
陰惨で美しいラストのカタルシスに呆然としたあとに、地獄篇とでもいうべき「死者たちの昏き迷宮」、そして最後に一種の清涼剤のようなすべての始まりの話「桃笑始」で、ようやく現実に戻ってくることができました。
政治劇であり、同時にラブロマンスでもある。その両方を、これだけ高い水準で両立させている小説は、ほとんどないのではないでしょうか。同好の方には、ぜひともおすすめしたいです。
小林先生の表紙の分、前回の復刊よりもお値段が少々高くなっていますが、それだけの価値は充分あると思います(光風社の出版当時の扉絵、挿絵等は残念ながらありません…念の為)
2020/05/19