| 著者 | 鈴木正崇 |
|---|---|
| 出版社 | 法藏館 |
| 判型 | 四六判 |
| 頁数 | 422 頁 |
| ジャンル | 専門書 |
| ISBNコード | 9784831856586 |
土俵の女人禁制は、本当に「伝統」なのか。初の女性総理誕生で再び話題にあがった土俵の女人禁制を再論。第四章として増補した、最新の女人禁制論。
本書は「女人禁制」に関する問題点を読み解く実践的な試みである。賛成か反対か、伝統か差別かの二者択一を乗り越えて、開かれた対話と議論を促す。
文化人類学の立場からの考察を主軸に、民俗学や宗教学、歴史学や国文学の成果も取り込んで、総合的に考察する。女人禁制の問題を考える人にとって長く活用される必読書となるべき1冊。
▼収録内容
第一章
相撲と女人禁制 2018年に大相撲の舞鶴巡業の際に、土俵上で倒れた市長を助けるために女性が土俵に上がって「女人禁制」が問題視された出来事を取り上げる。「土俵の女人禁制」について、その起源と展開を考察する。近代の国技館開設以後、表彰式などの「近代の儀式」を創出した大相撲は、「国技」としての権威を高めてナショナリズムと同調していった。戦後は、前近代以来の「土俵祭」の伝統を維持する一方で、表彰式を男性参加に限定して土俵上で行うという矛盾が露呈して、「土俵の女人禁制」が問題視されることになった。
第二章
穢れと女人禁制 「女人禁制」を古代・中世・近世・近代の穢れの変化と関連付けて検討。古代では、戒律に基づき、仏教寺院の「結界」として女性を排除した。一方、山と里の間の「山の境界」は、仏教の影響を受けて「山の結界」となり、「女人結界」へと変化。女性の穢れ観も歴史的に変化し、中世後期には『血盆経』の影響で罪業観や血穢の強調ともに展開し、近世には民衆の間に広がって定着。明治5年に女人結界は解禁されてほぼ消滅した。またスリランカやインドの事例など人類学の理論をふまえて、穢れ論の再構築と一般化の可能性を探った。
第三章
山岳信仰とジェンダー 女人禁制の言説を、歴史の中の女人禁制、習俗としての女人禁制、社会運動の中の女人禁制、差別としての女人禁制に分け、ジェンダーの問題を視野に入れて論じる。地域社会の事例として、現在も女人禁制を維持する大峯山の山上ケ岳山麓の洞川を取り上げた。神仏分離以後の再編成、国立公園の登録、交通路の整備、山麓寺院の女人解禁、禁制地区の縮小、女性による新たな動き、伝統の再発見、禁制解禁の胎動、世界遺産、日本遺産などを関連付けて、女人禁制の行方を展望する。
第四章
初の女性総理誕生で再び話題にあがった土俵の女人禁制を再論。併せて大峯山の女人禁制も検討する。女人禁制をめぐる言説は、前近代と近代以降で意味が異なる。禁忌から禁止へ、排除へ、特に「差別」と読み替えられて、メディアを介して人権の概念と結合し、強い社会的言説に変貌した過程を追う。「伝統」もまた近代に創られた概念であり、固定的でなく変化しうる。今後は二者択一を超え、対話と合意形成を通じて再考する必要がある。
本書は「女人禁制」に関する問題点を読み解く実践的な試みである。賛成か反対か、伝統か差別かの二者択一を乗り越えて、開かれた対話と議論を促す。
文化人類学の立場からの考察を主軸に、民俗学や宗教学、歴史学や国文学の成果も取り込んで、総合的に考察する。女人禁制の問題を考える人にとって長く活用される必読書となるべき1冊。
▼収録内容
第一章
相撲と女人禁制 2018年に大相撲の舞鶴巡業の際に、土俵上で倒れた市長を助けるために女性が土俵に上がって「女人禁制」が問題視された出来事を取り上げる。「土俵の女人禁制」について、その起源と展開を考察する。近代の国技館開設以後、表彰式などの「近代の儀式」を創出した大相撲は、「国技」としての権威を高めてナショナリズムと同調していった。戦後は、前近代以来の「土俵祭」の伝統を維持する一方で、表彰式を男性参加に限定して土俵上で行うという矛盾が露呈して、「土俵の女人禁制」が問題視されることになった。
第二章
穢れと女人禁制 「女人禁制」を古代・中世・近世・近代の穢れの変化と関連付けて検討。古代では、戒律に基づき、仏教寺院の「結界」として女性を排除した。一方、山と里の間の「山の境界」は、仏教の影響を受けて「山の結界」となり、「女人結界」へと変化。女性の穢れ観も歴史的に変化し、中世後期には『血盆経』の影響で罪業観や血穢の強調ともに展開し、近世には民衆の間に広がって定着。明治5年に女人結界は解禁されてほぼ消滅した。またスリランカやインドの事例など人類学の理論をふまえて、穢れ論の再構築と一般化の可能性を探った。
第三章
山岳信仰とジェンダー 女人禁制の言説を、歴史の中の女人禁制、習俗としての女人禁制、社会運動の中の女人禁制、差別としての女人禁制に分け、ジェンダーの問題を視野に入れて論じる。地域社会の事例として、現在も女人禁制を維持する大峯山の山上ケ岳山麓の洞川を取り上げた。神仏分離以後の再編成、国立公園の登録、交通路の整備、山麓寺院の女人解禁、禁制地区の縮小、女性による新たな動き、伝統の再発見、禁制解禁の胎動、世界遺産、日本遺産などを関連付けて、女人禁制の行方を展望する。
第四章
初の女性総理誕生で再び話題にあがった土俵の女人禁制を再論。併せて大峯山の女人禁制も検討する。女人禁制をめぐる言説は、前近代と近代以降で意味が異なる。禁忌から禁止へ、排除へ、特に「差別」と読み替えられて、メディアを介して人権の概念と結合し、強い社会的言説に変貌した過程を追う。「伝統」もまた近代に創られた概念であり、固定的でなく変化しうる。今後は二者択一を超え、対話と合意形成を通じて再考する必要がある。