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ディストピアSF論 人新世のユートピアを求めて

海老原豊

3,080円(税込)

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著者 海老原豊
出版社 小鳥遊書房
判型 四六判
頁数 352 頁
ジャンル 専門書
ISBNコード 9784867800508

商品内容

誰かのユートピアは、誰かのディストピアである。
ユートピアがディストピアに変容するトポス(場所)を古典的な作品から現代までSFに探る。
「監視」「人工知能」「人口調整」「例外状態」「災害」「気候変動」「労働解放」などを鍵語に、ユートピアとディストピアとの境界線をたどりながら、人新世のユートピアを想像/創造しよう。

▼目次
はじめに 欲望されるディストピア
第1章 古典的ディストピア -三部作から二一世紀ディストピアへ

--1 『一九八四年』に描かれていないもの
 --1-1 惹かれる理由
 --1-2 客体としての過去
 --1-3 非人間的手段
 --1-4 オーウェルの(不)可能性
--2 『すばらしい新世界』のすばらしいアポリア
 --2-1 「すばらしい」人口・階級管理
 --2-2 「すばらしい」感情の排除
 --2-3 「すばらしい」ソーマ
 --2-4 標準からの偏差 バーナード・マルクス
 --2-5 内部化される外部 高貴な野人・ジョン
 --2-6 システムのアップデート 世界統制官ムスタファ・モンド
 --2-7 四層ヒエラルキー
--3 『華氏451度』のメディア(媒体)
 --3-1 本(知識)を管理する者
 --3-1 媒体としての本自体
 --3-3 本の読み手(インテリvs大衆)
--4 二一世紀ディストピアへ
 --4-1 《(1)場所 -境界・統治・法・アーキテクチャ》
 --4-2 《(2)市民 -階級・道徳・身体》
 --4-3 《(3)労働 -生産・消費》
 --4-4 《(4)メディア -リテラシー・コミュニケーション》
 --4-5 《(5)環境 -災害・気候変動》
第2章 監視ディストピア -スマート化された身体のアイデンティティ
--1 風景から環境へ、溶け込むカメラ
--2 ヒューリスティックと合理性のあいだ -映画『AI崩壊』
 --2-1 地に足のついたAI像
 --2-2 なぜ浩介は妻を助けなかったのか
 --2-3 なぜAIのぞみは修正プログラムをカメラで読むのか
--3 不可視化する/される階級的身体 -林譲治『不可視の網』
 --3-1 監視カメラ下での不可能犯罪
 --3-2 不可視化する/される階級的身体
--4 遠のく「透明化」 -デイヴ・エガーズ『ザ・サークル』
 --4-1 サークルのサービス
 --4-2 透明化、そして完全化へ
 --4-3 メイの「裂け目」と欲望の行方
 --4-4 通時的/共時的な因果関係
--5 分人dividualsと散映divisuals -エアリプと平野啓一郎『ドーン』
 --5-1 分人と散映
 --5-2 散映と透明化
 --5-3 分人のアイデンティティ
 --5-4 私たちはどうしてエアリプをしてしまうのか
--6 監視ディストピア 結論
第3章 人口調整ディストピアと例外社会
--1 少子高齢化時代の「炎上」案件
--2 減らしディストピアの原型 -星新一「生活維持省」
--3 「かわりましょかわりましょ」 -藤子・F ・不二雄「定年退食」
--4 老後の人権がありません! -垣谷美雨『七十歳死亡法案、可決』
--5 決断できない国民・決断できる政治家 -山田宗樹『百年法』
--6 確率化された暴力としての国家繁栄=福祉 -映画『イキガミ』
--7 静謐な「自決」を止める -映画『PLAN75』
--8 結論
第4章 災害ディストピアとニーズの分配
--1 人新世と気候正義
--2 ソルニットの災害ユートピア
--3 新しい社会を設計する -ジョン・ウィンダム『トリフィド時代』
--4 猿の惑星〈新三部作〉
 --4-1 『猿の惑星:創世記』
 --4-2 『猿の惑星:新世紀』
 --4-3 『猿の惑星:聖戦記』
 --4-4 ユートピア/ディストピアの置換
--5 石油の枯渇した社会で -パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』
--6 『日本沈没-希望のひと』
 --6-1 科学的態度
 --6-2 パターナリズムと報道の自由
 --6-3 個別的な国民と普遍的な人権
 --6-4 『希望のひと』が「沈めた」もの
 --6-5 移民に対する想像力
 --6-6 韓国・朝鮮半島
 --6-7 人々の日常生活
--7 災害ディストピア 結論
--補論 小松左京『日本沈没』と日本人の成熟
 --補-1 「おとな民族」と地球の進化
 --補-2 草食系男子の成熟
 --補-3 アニメ『日本沈没2020』
第5章 労働解放ディストピアの製造コスト
--1 生産と再生産のトレードオフ 1 カレル・チャペック『ロボット RUR』
--2 もっとも人間らしいのは誰だ -H・G・ウェルズ『タイムマシン』
 --2-1 どちらに感情移入するのか
 --2-2 どちらか人間らしいか
 --2-3 タイムトラヴェラーは人間らしいか
--3 人間から労働が疎外されたユートピア -映画『ウォーリー』
 --3-1 あらすじ
 --3-2 人間の労働をロボットに置き換えることは可能か?
 --3-3 労働する手足
 --3-4道具の目的性と逸脱
--4 想像力の放逐 -小川哲『ユートロニカのこちら側』
--5 無所有主義とアナキズム -アーシュラ・ル・グィン『所有せざる人々』
 --5-1 オドー主義の非中央集権性
 --5-2 関係性の所有(=所有的関係)
 --5-3 創造性を所有できるか
 --5-4 知識の偏在は解消できるのか
--6 労働解放ディストピア 結論
おわりに 支配と抵抗の脱構築
--1 プラトンのユートピア
--2 《私たち》から《あいつら》をパージする
--3 仮想現実のユートピア/ディストピア性
--4 ハッピークラシーの生前統治
--5 希望と絶望のタペストリー

参考文献
あとがき
索引


▼著者プロフィール
海老原豊(えびはら ゆたか)
1982年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻修士課程修了。SF評論家。「グレッグ・イーガンとスパイラルダンスを:「適切な愛」「祈りの海」「しあわせの理由」に読む境界解体の快楽」で第2回日本SF評論賞優秀賞を受賞。著書に、単著『ポストヒューマン宣言:SFの中の新しい人間』(小鳥遊書房)、共編著『3・11の未来:日本・SF・創造力』(作品社)、共著『ポストヒューマニティーズ:伊藤計劃以後のSF』(南雲堂)ほか。

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