都市に魅了され続ける森山大道が、あらゆる要素が混沌とする「東京」をグラフィカルでキッチュでポップに、そしてチープでエロティカルに撮影した写真集。森山大道が2017年以降に撮影したカラーのスナップで構成。
ぼくのストリートスナップのひとつの在り様として、路上の至る所で目に映るグラフィカルなあれこれを好んで写してしまう傾向がある。
むろんそうしたイメージばかりを撮っているわけではなくて路上の人々の生態や都市風景などさまざまであるが、この写真集制作の依頼を受けたとき、どうしても今度の一冊は、
とにかく全体をグラフィカルに、あるいはキッチュでポップに、ときにチープでエロティカルなイメージを中心にまとめてみたいと思ったのだ。
そんな本を作ろうとしたとき、”東京”はまさにぴったりの都市で、新宿、渋谷、池袋、浅草、銀座と、右を向いても左を見ても、あたかもオモチャ箱を引っくり返したというか、
パンドラの匣が開いてしまったというか、都市を構成するありとあらゆる要素がじつに混然雑然としているわけで、カメラを片手にそれらのさ中を歩くぼくとしては、ついゾクゾクと嬉しくなる。
ポスターを見ても、看板を見ても、ショーウインドーを見ても、路上の片隅に至るまで、どこもかしこもチャラチャラペラペラと、ぼくの写す気持ちを刺激し感応してくることになる。
そして、辺り全体から立ち昇り聴こえてくるBGMはといえば、そのリズムといいテムポといい、まさにブギウギというしかないサウンドというかノイズである。
本の編集が終わったとき、もうこの一冊のタイトルは「東京ブギウギ」しかないゾとぼくは思った。
大都会には、虚と実が抽象と具体が、永遠に反転しつづける不思議なダイナミズムを持っているので、ストリートカメラマンも永遠にシャッターを切りつづける他はないのだ。都市の路上は、幾重にも謎のレイヤーに包まれているから。
森山大道