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レビュー
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天の鹿
ひたすらに美しく、切ない幕切れ
安房直子さんの童話は因果応報が「ない」ものが多いです。つまり人間がかつての罪の報いでひどい目にあったり、不思議な者たちとの約束を破ったために元の世界に帰れなかったり、というような展開は稀で、たいていの場合は不思議な体験をしながらも無事に返してくれるのです。
本書は、そんな安房直子作品の中では、ちょっと切なく悲しい結末であるという印象を持つ方が多いかでしょう。ラストの情景は、もし実際に目にすることがあったならば、それはそれは美しいものであろうと思わせる「絶景」なのですが、追いつけぬと分かっても尚、蜃気楼を求める旅人のように追いすがる清十の気持ちは如何ばかりか…。
スズキコージ画伯の挿絵がまた、この美しくも切ない幕切れにぴったりと嵌っています。挿絵のない「安房直子コレクション」にも収録されている作品ですが、ぜひ、こちらのスズキコージ挿絵版で読んでいただきたい作品だと思います。(2018/08/24)
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辺境の惑星
【著者】アーシュラ・K・ル・グイン