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レビュー

  • 解体屋外伝 <いとうせいこうレトロスペクティブ>

    いとうせいこう

    暗示の外に出ろ、俺たちには未来がある

    いとうせいこう氏は多方面で活躍しています。

    今年、『想像ラジオ』という久々の小説作品で、芥川賞にもノミネートされ、その後、野間文芸新人賞を受賞しました。震災と向き合った小説です。この小説の登場により、過去の彼の作品が装丁を新たにして復刊しました。

    若い世代のなかには、ミュージシャンとして、TVタレントとして、また、マルチなプロデューサーとしてのいとう氏は知っているが、小説を読んだことがない、という方もおられるかもしれません。

    いとうせいこうの小説が未体験、という羨ましい方には、ぜひ本書と『ワールズエンドガーデン』の二冊を読んでみていただきたいです。

    言葉に宿る独特のグルーヴ感とアジテーション、スピード感には、肉体的に味わう読書の快感があり、身体としての脳にもダイレクトに触られるかのようです。

    この作品は、解体屋という、新興宗教や自己啓発セミナーなどでかけられた暗示・洗脳を解くことを仕事にしている男が主人公で、『ワールズ〜』からのスピンアウト作品です。独立しても楽しめますし、あちらを先に読んでもいいと思います。
    作品のテイストとしては、こちらの方が、解体屋というキャラクターの軽みのある魅力的な造型もあって、外伝らしくエンタメ色が強く仕上がっています。

    いとうせいこう氏は、震災後の音楽イベントで、解体屋を地でいくパフォーマンスを披露していました。本書を読んだ後に、以下の動画を見ると、ぞくっとくるのではないかと思います。この暗示と洗脳に満ちた作品のなかの世界は、本のなかに閉じこめておける対象的なものではない。今、自分たちが生きている現実と地続き、あるいは、この現実そのものなのだ、と日々を見る目が変わる気がしました。

    http://m.youtube.com/watch?v=wWfajsFpHoA&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3DwWfajsFpHoA(2013/11/22)

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