書物復権によせて
持谷寿夫
12月終わりから4月にかけて恒例の「書物復権 共同復刊」リーフレットが届く。
1号の復刊リクエスト号から2号での復刊書目の発表、5月の一斉発売へ。この事業に携わらなくなってから久しいが毎年の候補には興味がわくし、思い入れのある書目もある。巻頭の各分野の専門家のエッセイにも刺激を受ける。1997年の第一回から30年、自らが執筆するようになるとは想像もしていなかった。
共同復刊は、遡ること13年前の1984年から書協主催で始まった「日本の本展」での文芸書の復刊展示に触発されている。近代日本の出版文化の誕生から約100年のこの頃、出版の歴史を振り返ろうという動きが出版界全体であり、その一環として文芸書の老舗出版社を中心に品切れ書の復刊展示を行った。会場の熱気は今でも覚えている。個々の出版社ごとのブース展示ではなく、池袋サンシャインシティの展示ホールにピラミッドに積まれた復刊書の山、さすがに重すぎて開場初日に扉を開けてみたら平台が崩れてしまっていたという笑い話もあった。もちろん大盛況でピラミッドはあっという間に小山に変わってしまった。共同で行うこと、個々の本の力強さを実感し、いつか自社も関わった復刊事業をと思い続けていた。
需要があるにも関わらずその需要が見えにくい専門書、一度品切れになると蘇らせることは難しい。手に取って見てもらうこともできない。この状況をなんとか打破できないか、文芸書ほどではないが共同で行えば成立するのではないかとも考えていた。
共同復刊事業ばかりでなく“書物復権” とは共同で本の存在をアピールするさまざまな施策の総体を呼ぶ言葉、編集者と読者との座談会、国際ブックフェアでの共同新企画説明会等々。 “書物復権” というネーミングには、ひとりの編集者から「書物は失権しているのか?」と問われたことがある。営業主導の取り組みなので、販売促進策と思われたのかもしれない。確かに売れるのはなにより嬉しいのだが、自らが刊行する本を未来に伝えるための営みを共同で行うというのが書物復権の目的でありこの4文字に込められた思い、新基軸・新編集・新訳・新装丁・電子化への取り組み、関連する書店・図書館・著作者・読者を巻き込んでのムーブメント。その実現のためにどのような知恵を発揮すれば良いのかを携わる者はいつでも考えている。すべての協働の中核になること、これが自らが世に送った本を時代を超えて伝える責務を持つ出版社の役割であることには間違いはなく、そのために“書物復権” の活動はこれからも続いていく。
見ていていただきたい。“書物復権” は未来に向かい、今も進化中。
◇持谷寿夫(もちたに ひさお)…1951年東京生。早稲田大学教育学部卒。都内書店に2年間勤務の後、1975年株式会社みすず書房入社、営業部配属。2009年代表取締役社長。2017年退任。