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著者 | フィリパ・ピアス 著 / 猪熊葉子 訳 |
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出版社 | 岩波書店 |
ジャンル | 児童書・絵本 |
ISBNコード | 9784001155068 |
登録日 | 2019/03/02 |
リクエストNo. | 68058 |
リクエスト内容
本書は、犬を飼いたいという憧憬じみた願望を通じて少年の心の成長を描いたファンタジー小説です。
誕生日祝いの子犬を期待していた少年ベンの、待ちに待った祖父からの小包の中味が一枚の刺繍犬の絵だったことを知ったときの落胆ぶり(失望と怒り)に、まずは同情を覚えます。
頭では都会では犬が飼える条件にない家の事情を理解できる年頃です。雌犬ティリーを飼う祖父母の田舎家で、祖母から21人もの孫がいると一家族に一匹でも犬を贈るとしたら大変なのだと諭されもします。でも、願望で一杯の心はまた別だから、ツライです。
亡くなった叔父さんからのメキシコ土産で祖母の宝物(思い出の品)だった刺繍犬の絵を、ベンはあろうことか帰りの汽車で無くしてしまいます。祖母からスペイン語の「チキチト チワワ」の意味をせっかく教えてもらったのに…。
ほんとうの犬を無くした気がしたベンは、瞼が塞がると(目を瞑ると)小さなチワワ犬の姿が見えるようになります。作者らしいファンタジックな世界ですが、私のような大人は、執着による幻視作用か、良心の呵責か、それとも奇病かとすぐ理屈をつけたがります。
大怪我から回復した主人公が田舎で子犬を産んだ祖父母の飼い犬ティリーと再会し、9匹の子犬と対面するシーンは感動的です。いいぞ、こりゃ願いが叶う吉兆やぞ。ロンドン北部への転居話が結実し、やっと念願の環境と飼い犬の許可の両方を手に入れます。
遂に大願成就かと思わせといて、相手が生き物だけに、理想と現実の食い違いを身をもって少年は体験することになります。これを克服して、一歩成長を遂げるのです。本当に良かったと、しみじみと幸福感の余韻が読者に伝わる幕切れは見事です。
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読後レビュー
NEWS
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2019/03/02
『まぼろしの小さな犬』(フィリパ・ピアス)の復刊リクエスト受付を開始しました。
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永遠のチャレンジャー