マッチは明治から大正にかけて日本の重要な輸出品であった。そのラベルの小空間に花開いた数多の図案は、名もない職人たちが輸出先に合わせて日々黙々として生み出したものだ。象や虎、星や月、乗り物、花など、ありとあらゆるものが、時には可憐に時には大胆に、時にはユーモラスにデザインされている。半世紀以上経た今、数百のラベルを眺めていると、摩訶不思議なエキゾチシズムあふれる世界を発見できる。

グラフィックデザイナー、下島正夫氏の明治期の燐票コレクション本。昭和期まではマッチラベルの蒐集は趣味としてもポピュラーであったが、ライターが登場してからは殆ど廃れてしまった。本書は明治時代に作られたさまざまな燐票を意匠のテーマ別に分類、豊富なカラー写真で紹介している。収録された燐票の意匠は今見てもユニークなものが多く、今活躍しているデザイナーの方にも参考になるものと思う。駸々堂ユニコンカラー双書5として1975年11月出版。装幀は田中一光。144頁で定価は500円。

なお、1989年には、同社より下島氏の明治から昭和期までの燐票コレクションを集大成した「マッチラベル－明治・大正・昭和・燐票博物館」が上梓されたが、そちらもファン必携の書籍である。

登録者の評価★★★★★★★★★☆

【目次】

◇カラー版32頁：火　象　馬　虎　猿　獅子　鹿　熊　いろいろな動物　親しい動物　カエルとコウモリ　昆虫　鳥　魚　子供　人物　老人

■明治の燐票（下島正夫）

◇カラー版32頁：飛行機　船　車　日本的なテーマ　帽子　ピストル　錨　文字　風景と建物　花　果樹　星　幻想の世界　旗