ふとした瞬間に心に浮かび、あるいは口をついて出る童謡。わたしたちが童謡を忘れ去ることができないばかりか、ひそかに愛しつづけているのは、それが、人と現実の生を生きるうえで必要とする夢想の領土と深くかかわっているからだろう。童謡の世界はどのような構造・質を持ち、どのような規準・価値観の法則にのっとった世界なのであろうか。

童話作家としても活躍されている小説家の三木卓氏が、日本人の心に生き続けている童謡の魅力とその受容史を探る。カラー頁では、雑誌「赤い鳥」、「コドモノクニ」や、童謡集に掲載された、明治から昭和にかけて活躍した絵師による素晴らしい絵画や、当時のレコードなどが紹介されており、資料的価値が高い。平凡社カラー新書119として1979年出版。152頁、定価は550円。

登録者の評価★★★★★★★★★★

【目次】

◇カラー版64頁：詩人と絵師たち
詩人：北原白秋　野口雨情　西条八十　竹久夢二　蒲田泣菫　三木露風　鹿島鳴秋　清水かつら　蕗谷虹児　与田準一
絵師：岡本一平　清水良雄　矢部季　初山滋　鈴木淳　脇田和　深沢省三　岡本帰一　武井武雄　寺内萬冶郎　加藤まさを　川上四郎　竹久夢二　名越国三郎　本田庄太郎　今関甫召　蕗谷虹児

■ペチカの記憶に誘われて

■童謡の世界
具体物の世界　風景の構造　道　危険のない道　危険のある道　未知への進行　未知よりの侵入　挫折の世界　無力への反抗　肉体のよろこび　大いなる世界へ

■五人の詩人
北原白秋　西条八十　野口雨情　サトウハチロー　与田準一

■曲名索引